仮説を立てるための「情報収集術」

上司の目に見えないニーズを読むには、「次はこう動くのではないか」とまず「仮説」を立てることです。そのために必要なのは、それを予知させる情報です。会社は今どんな状態にあり、どんな課題を抱え、上司はどのような立場にあるのか、情報をつかんでおく必要があります。

そのため、私が部下の秘書たちに常に言っているのは、関係部署と密にネットワークを持ち、グッドニュースも、バッドニュースも入るようにしておくということです。ただ、情報は先方から信頼されないと入ってきません。だから、秘書として関係部署の人たちにも、100パーセント献身的であることで信頼を勝ち取る必要があるのです。

情報は自分からも把握しておかなければなりません。私が秘書としてつく鈴木(敏文会長)は巨大グループのトップです。そのまわりにはさまざまな人たちの動きがあります。そこで、なぜ今この人たちが出入りするのだろうかと常に考え、関係部署に聞くなり、自分の目の前を通っていく書類に目を通すなりして、その時点での会社の課題や問題をつかんでおきます。

鈴木が出る会議にはできるだけ出席し、そこで役員に指示が出れば、指示内容から、その役員がいつごろ報告に来そうかを予測し、その時間は空けておくといったスケジュール調整も行います。その際、その役員が朝イチで報告して早くすませたがるタイプか、午後のゆったりした時間に説明しようとするタイプか、心理的な“癖”も事前につかんでおきます。

会社の株価や業績など毎日変わる数字のチェックも欠かせません。鈴木は私にサポート的な役割も求めるため、朝一番のスケジュール確認の際には、その日の数字について会話し、認識を共有します。私の意見に「ん?」といった違和感のある反応を感じたときは、後で関係部署からも情報を集めてあらためて答えを示し、同意を得て着地させます。このように秘書は人の動きを見、数字を頭に入れ、常に思考し続けなければならないのです。