現場密着こそが商品力を高める
メーカーが商品を売る際、顧客に直接売るのではなく、代理店や問屋といった卸売業の会社を通して売るのが一般的です。 企業を顧客とするB to Bビジネスの場合は、卸売業の会社を経由して商品を販売しますが、一般消費者を顧客とするB to Cビジネスであれば、さらに量販店やコンビニといった小売業の会社を通して商品を販売します。
なぜメーカーと顧客の間に、卸売業や小売業といった会社を介在させるのでしょうか。それは、販路を拡大することができる、個々の顧客と直接取引することにより発生する煩雑な手続きから解放されるといったメーカーにとってのメリットがあるからです。
ところがキーエンスは代理店などを仲介させることなく、全ての顧客に直接販売を行っています。その分、営業職の社員数が多いのですが、この直接販売にこそ高収益のヒントが隠されているのです。
キーエンスの商品は工場の生産ラインに不可欠な自動化・省力化のセンサーや測定機器などを販売しているため、工場さえ持っている企業であれば自動車、半導体、電子機器、食品、薬品といったあらゆる業種が営業のターゲットとなります。そしてキーエンスは直接販売のため、営業職が製造の現場に実際に赴き、製造過程の問題点を見聞きしやすい立場にあります。現場を知り尽くしているからこそ、生産性の向上や不良率の低下につながる商品を自社で企画することができる、つまり、直接販売だからこそ「開発・営業両部門が一体となった新商品開発・市場開拓」が実現できるのです。
また、1社で発生した問題は他の多くの顧客の製造現場にも共通する問題であったりするため、1つの成功事例を元に、新商品を他社にもどんどん展開することができます。さらにキーエンスは国内にとどまらず海外にも進出しており、売上の半分を海外売上が占めています。
このように、個別の問題を解決できる付加価値の高い商品でありながら、それを大量に製造委託先に発注することでコストを安く抑えることがでるため、利益率はさらにアップするのです。