女性管理職を増やそうという数字目標を作る前に考えるべきこと

キャリアの曲がり角に差し掛かっている(つまり会社においてベテランや管理職と言われる立場にある)このコラムの女性読者の皆さんの中で、「いま私は、自分が思い描いたキャリアプラン通りの仕事ができている」という人はどれくらいいるでしょう? 働く女性の多くは、ライフイベントに左右されたキャリアを持っているはずです。結婚、出産、育児、今なら介護もそうかもしれません。仕事とは関係ない、しかし自分の人生においてとても重要な出来事によって、出世をあきらめたり、別の道を模索したり、転職を余儀なくされたりした人も多いのではないでしょうか。

「後に続く後輩のために、道を整備してあげてほしい」という話をするのは簡単ですが、そういうことでもないような気がします。とはいえ、自分がそういう状況に置かれた時に、どのような制度や仕組みがあればもっといい選択ができたのかを振り返る、という話なら、すでに多くの提案がなされているので、「屋上屋を架す」みたいなものでしょう。女性活用(この言葉は好きではありませんが)を考えると称して、政府もたくさんの数値目標を設定して、打ち手を用意しているので、それに期待したいところですが、なかなか難しい。

今回のコラムには、結論らしい結論はありません。ただ、女性の働きやすさを改善していくためには、それまで当たり前だと思っていたこと、今回なら「ライフイベントにキャリアが左右されるのは、圧倒的に女性が多い」という状況を、一個人として改めて考え直すところから始めることが、結果として近道なのかなという気がしています。「変わらない」ことの多くは、いまとなっては「ちょっとした思い込み」に左右されていることも多いからです。

サカタカツミ/クリエイティブディレクター
就職や転職、若手社会人のキャリア開発などの各種サービスやウェブサイトのプロデュース、ディレクションを、数多く&幅広く手がけている。直近は、企業の人事が持つ様々なデータと個人のスキルデータを掛け合わせることにより、その組織が持つ特性や、求める人物像を可視化、最適な配置や育成が可能になるサービスを作っている。リクルートワークス研究所『「2025年の働く」予測』プロジェクトメンバー。著書に『就職のオキテ』『会社のオキテ』(以上、翔泳社)。「人が辞めない」という視点における寄稿記事や登壇も多数。