企業DNA=「らしさ」の重要性

【原田】集客という面では、パルコは昔からユニークなイベントで知られています。林さんは以前、パルコの文化発信を象徴する渋谷パルコで、イベント企画を担当されていたそうですね。

【林】入社して最初の配属が、渋谷パルコのイベント企画や運営をする部署でした。ドリカム展やブルーハーツ展、ローリングストーンズ展などを担当しました。アーティストの所属事務所との交渉から、展示のレイアウトやポスター作りまでとにかく何でもやりました。

【原田】企画を選定する基準というのはあるのでしょうか?

【林】企画については、「やりたい」と言えば何でもやらせてもらえました。上司から理詰めで「ダメだ」と言われたことはなかったですね。私のような若手の社員を含め、それぞれが自分の趣味や、イケてると感じていることを仕事に落としこんで企画します。自分が好きな分野なので、勘所やツボがわかる。そういったところで「パルコらしさ」が生まれ、会社のDNAになっているような気がしますね。

【原田】私たちが外から見ても、パルコという企業としての「らしさ」が明確に存在している印象を受けます。その「パルコらしさ」が、Webやアプリの戦略にも息づいていますね。

【林】パルコの社員は、趣味にのめり込むようなタイプの人が多い。そうした、一見バラバラな人たちが集合体になって、「パルコらしさ」が生まれるのでしょうか。今でいうダイバーシティが、パルコらしさの源泉かもしれませんね。それが、「他ではあまり取り上げないテーマも、パルコはよく拾ってるよね」ということになるのかな。

「これは僕個人の趣味であって、仕事につなげるつもりはない」という人も中にはいますが、趣味や好きなことを仕事につなげている人が多いです。そうすると、熱意があって気持ちも入るので、よいものになる確率が上がるように思います。

【原田】林さん自身の考え方や感覚が「パルコらしさ」、つまり会社のDNAと合っているのでしょうね。それが活躍につながっているように感じます。これから管理職になろうとしている人は、自分の考え方や好みが会社のDNAと合っているかどうか、無理なくいきいきと働けるかという点について、しっかり考えてみる機会を持つとよいですね。

【林】私は、プライベートと仕事を明確に分けられないタイプだと思います。あえて分ける必要もなくて、プライベートで好きなことをやっていれば、何かしら仕事にも活きてきますし、逆に仕事で学んだことが、プライベートに活きることもたくさんあります

特にプライベートでは、女性の方がアンテナを張っていろいろなことに興味・関心を持ち、チャレンジしていると思うことが多いです。1つのことに集中しがちの男性よりも、フットワークが軽くていいなと、うらやましく感じます。仕事でもプライベートでも興味、関心や経験を生かせると、強みになりますよね。

■インタビューを終えて
林さん、ありがとうございました。パルコとはイタリア語で「公園」の意味で、渋谷パルコまでの坂道「公園通り」はパルコが定着させた名前です。建物とその周辺の「街の文化」を同時に作っていくパルコは、今日の渋谷の基礎を作ったといっても過言ではありません。いつの時代も新しい文化を作る企業で、新しい仕事が生まれていくのは当然なのかもしれませんね、林さん、次はパルコでお会いしましょう。(原田博植)
原田博植(はらだ・ひろうえ)
株式会社リクルートライフスタイル ネットビジネス本部 アナリスト。2012年に株式会社リクルートへ入社。人材事業(リクナビNEXT・リクルートエージェント)、販促事業(じゃらん・ホットペッパーグル メ・ホットペッパービューティー)、EC事業(ポンパレモール)にてデータベース改良とアルゴリズム開発を歴任。2013年日本のデータサイエンス技術書 の草分け「データサイエンティスト養成読本」執筆。2014年業界団体「丸の内アナリティクス」を立ち上げ主宰。2015年データサイエン ティスト・オブ・ザ・イヤー受賞。早稲田大学創造理工学部招聘教授。

構成=大井明子 撮影=岡村隆広