来店前後も途切れることなく“接客”できる

【原田】「館の接客」と「Webやアプリの接客」との間に、関連性はありますか。

【林】今はどこかに行こうとすると、まずはスマホで情報収集しますよね。パルコで言うと、ショップのブログを見てから来店するという流れです。先に見たブログをきっかけにスタッフと会話が盛り上がるかもしれませんし、また店舗での接客の印象がよければ、家に帰ってからもそのスタッフのブログを見て、「またお店に行きたい」「あのスタッフから買いたい」という気持ちになるかもしれません。Webやアプリを上手に使うことで、来店前や来店後も途切れることなく“接客”をできるようにするというのがパルコの戦略です。

林直孝(はやし・なおたか)さん。株式会社パルコ WEB/マーケティング部 部長(2016年3月よりWEB/マーケティング部、メディアコミュニケーション部担当執行役)。パルコ入社後、全国の店舗の運営、管理業務やグループ会社の株式会社パルコ・シティでWeb事業を歴任。2013年よりパルコにてWebを通じた顧客コミュニケーションやオムニチャネルの戦略立案と実務を担当。2015年より店舗のICT活用やハウスカードとスマホアプリを連携した「個客」マーケティングを推進している。

【原田】結果はいかがでしたか。

【林】カエルパルコは最初、静岡県の3店舗で試験的に始めたのですが、開始3カ月で、店舗の売り上げを10~15%増やす効果がありました。現在では全国に展開し、ショップがさまざまな使い方を編み出して効果を上げています。そうしたノウハウを他のショップに横展開できるように、2015年9月からは、ショップスタッフ向けのeラーニングを始めました。スマホで休憩中に見てもらったりしています。

【原田】Webやアプリのよいところは、その効果が可視化できることです。何か工夫はされていますか?

【林】ショップブログを見てもらうために「POCKET PARCO」というアプリを提供しています。このアプリには、お客様が「いいな」と思ったショップブログの商品をクリップできる仕組みがあり、クリップ数は、それぞれのブログの画面に表示されます。Facebookの「いいね!」のようなイメージですね。ショップスタッフはクリップ数が多い店舗のブログを見て研究し、工夫しています。このクリップ数の表示を始めてから、ブログの写真の質がどんどん上がり、“見る楽しみ”を広げることができました。

【原田】効果が見えるということは、ショップスタッフの皆さんにとって、「ブログの更新を頑張ろう」というようなインセンティブになりますね。