スタッフに教わり、共有に徹する

【林】さまざまなデータ分析ができるようになったのはありがたいことですが、それ以上に、ショップの皆さんに接客についてのフィードバックができるようになったことがうれしいです。

以前は、接客がよかったからといって、その評価がパルコやショップに届くことはほとんどありませんでした。それこそクレームがあったときくらいしかフィードバックができなかった。POCKET PARCOでは、お客様が接客に対する評価やコメントをすると、ポイントが付く仕組みを取り入れています。最初は、ネガティブな声ばかりが集まるのではないか……という不安がありましたが、ふたを開けてみると、最高点を付けてくださるユーザーが多いという結果になりました。中には泣けてくるようなよいコメントもあります。ショップスタッフの皆さんに前向きなフィードバックが行える仕組みを作り上げられた、これはよかった点ですね。

「お客様にとってよさそうなサービスは、とりあえず始めてみる」というのが、仕事の上で学び、大切に実践していることです。お客様にはテナントスタッフのも含まれます。ブログからカエルパルコ、アプリへと進化させてきたように、まずはやってみて、お客様の反応があることを探り、よりよいサービスにしていく。迷うことに時間をかけず始められることから始め、その後のPDCAが大事だと考えています。

【原田】Webやアプリの活用によって、パルコの役割は変化しましたか?

原田博植(はらだ・ひろうえ)さん。株式会社リクルートライフスタイル ネットビジネス本部 アナリスト。人材事業、販促事業、EC事業にてデータベース改良とアルゴリズム開発を歴任。2015年データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤー受賞。

【林】パルコが「建物を用意し、集客する」、そして「入居するテナントが、商品やサービスを売ることをサポートする」という役割は変わっていません。しかし、これまでやってきたパルコが各テナントから情報を集めて宣伝し、集客するというスタイルが、今はショップスタッフがネットを使って直接情報を発信し、お客様とコミュニケーションを取るというスタイルに変わっています。

ですので、パルコからテナントスタッフへ指導するのではなく、スタッフから教えてもらい、パルコが伝わりやすく体系化したものを共有するということをもっとも大切にしています。

日々お客様と接する現場のスタッフは、情報とノウハウの宝庫です。個々のスタッフのスキルアップには、リアルでもWeb接客でも、そのノウハウを共有することがいちばん重要です。2万人以上に上るスタッフの声をたくさん聞いて、たくさん改善する。そのスピードが大切なのです。パルコがこの共有のための仕組みを使いやすく整え、ノウハウを伝えるという役割に徹した方が、効果を出しやすいと考えています。