「視線のノイズ」とは?

「目は口ほどに物を言う」ということわざがありますが、プレゼンテーションにおいて、目の動きは、聞き手が話し手を信頼足りうるかどうかを判断する非常に重要なものです。実際によく見かける光景ですが、下記のような振る舞いはNGなので注意が必要です。

視線のノイズ
・聞き手の目を見ずにひたすら資料ばかりを見ている
・特定の人だけを見て、他の人は全く見ない
・目の動きが早すぎて、キョロキョロと視線がさまよう
・頻繁にまばたきをする
・困った時につい上に視線が泳いでしまう

など視線が泳いでしまう動きはノイズです。

原稿は全て覚えなくていい。視線が泳がないための対処法

目が泳がないようにするためには、不安を取り去ることです。不安には主に2つの要因があります。

一つ目の不安として大きいのは、言うことを忘れてしまったらどうしようというもの。この解決法は「原稿を全て覚えようとしない」これに尽きます。

覚えようとすればするほど、忘れてしまった時に不安になって、目が泳いだり、上を見てしまうのです。何かを思い出そうとする時は右上に目が行きやすいと言われています。原稿を一言一句間違えずに伝えることがプレゼンテーションではありません。私の研修では用意した原稿をもとに話してもらう練習をしますが、その際、多少言葉や文の順番が原稿と違っていても聞いている受講生は誰も気にしません。

通常のプレゼンテーションの場合には、聞き手は何が話されるのかを知らないわけですから、原稿どおりにいかなくても誰も気が付かないでしょう。準備をしっかりとすることはとても大切ですが、多少の間違いを恐れ過ぎないことです。

もう一つの不安として大きいのが、聞き手と目が合うと緊張が増すというもの。これは「見られている」という意識が緊張を増幅させるためです。見られていると思うと一挙手一投足がぎこちなくなります。この意識を思い切って「自分が見ている」と反対に変えましょう。恥ずかしいと思っているうちは意識が自分に向いています。伝えたいと心の底から思えば、意識は聞き手に向かいます。聞き手の反応をしっかりと確かめる、観察するくらいの意識に変えていきましょう。

身体の動きと視線の動きのノイズカットをするだけでも落ち着いた、堂々とした印象を与えられます。

次回の本連載の最終回では、更に効果的なインパクトを出すジェスチャーやアイコンタクトのテクニックをご紹介します。

清水久三子
お茶の水女子大学卒。大手アパレル企業を経て、1998年にプライスウォーターハウスコンサルタント(現IBM)入社後、企業変革戦略コンサルティングチームのリーダーとして、数々の変革プロジェクトをリード。
2005年より、コンサルティングサービス&SI事業部門の人材開発部門リーダーとして5000人のコンサルタント・SEの人材育成を担い、独立。2015年6月にワーク・ライフバランスの実現支援を使命とした会社、オーガナイズ・コンサルティングを設立。延べ3000人のコンサルタント、マーケッターの指導育成経験を持つ「プロを育てるプロ」として知られている。
主な著書に「プロの学び力」「プロの課題設定力」「プロの資料作成力」(東洋経済新報社)、「外資系コンサルタントのインパクト図解術」(中経出版)、「一瞬で伝え、感情を揺さぶる プレゼンテーション」、「外資系コンサルが入社1年目に学ぶ資料作成の教科書」(KADOKAWA)がある。新刊「ビジュアル 資料作成ハンドブック」(日本経済新聞出版社)は1月16日発売。