ぬくもりのあるアクセサリを続々と

2006年、星川さんはトリニティ株式会社を3人で立ち上げた。

「起業する前は、オーディオの輸入商社にいました。30~40人規模の会社で、レコーディングスタジオや劇場に、プロ向けの機材を卸すような会社です。僕はそこでブランド担当、セールス、マーケティングなどをやっていたので、辞めてからも自分で同じようなことができると思いました。ただ、業務用のオーディオ設備のように1回で1億円が動くといったビジネスではなく、BtoCで、自分自身も使うような製品を扱うビジネスをやりたかったんです」

起業して最初は事務所を借りず、埼玉県新座市の自宅をオフィスにした。それなら初期投資も少ないし、失敗しても痛手は少ない。ちょうどiPodが登場したころで、そのアクセサリやオーディオシステムを輸入して販売した。

「最初は輸入だけだったのですが、2年目くらいから需要が高まり、それだけでは供給していくスピードが追いつかなくなってきた。iPod nanoが出てきたりもしましたから。その頃から、アメリカの展示会で出会った台湾の工場主と一緒に(アクセサリの)製造を始めたんです。7年前からは生産数が追いつかなくなり、より生産量の多い中国の工場に委託するようになりました」

海外ブランドのBlueloungeやCatalystなどの輸入販売に加え、最初に立ち上げた自社ブランドが「Simplism(シンプリズム)」。その後「次元」、「NuAns」といったデジタルガジェット用アクセサリブランドを増やしていった。

「メールチェックひとつとっても、すごく時代が変わりました。昔は家に帰ったらPCを立ち上げてメールを見ていたけれど、今はデバイスと常に一緒に生活して、ベッドやソファやカフェでスマホを見る時代になりましたよね。その時に見える景色が変わったんです。無機質なオフィスではなく、自分の好きなものに囲まれた場所で、仕事ができるようになった。だからスマートフォンのアクセサリも、もっとインテリアとか雑貨に寄った、生活に溶け込むようなものが欲しいんじゃないかなと。そこでデザインチームのTENTと組んだんですよ」

TENTとのプロジェクトで生まれたのが、NuAnsブランド、そしてNuAns NEOだ。モバイルバッテリーやケーブルも、暖かみのあるカーキや黄色。木や皮を使ったスマートフォンケース……星川さんのどこかほっこりした話しぶりは「これを作ってきた人」と思うと違和感がない。

写真を拡大
デザインチームのTENTと組んで開発したNuANSシリーズ。NuAns NEOは、ベッドやソファやカフェなど、日常のシーンに溶け込むような、暖かみのあるデザインに仕上げている。