“次世代”を代表する期待の人物、しかもカッコイイ男性を厳選して写真とインタビューで紹介する、というコンセプトの連載「次世代イケメン紳士録」が始まりました。1人目はWindows 10 Mobileスマートフォン「NuAns NEO」で注目、トリニティの星川社長。爽やかすぎる40歳の経営者、その素顔に迫ります。

このたびスタートした「次世代イケメン紳士録」は、さまざまなジャンルで“次世代”を代表するであろう期待の男性、しかもイケメン(!)を厳選してご登場いただくというインタビュー連載だ。インタビューを担当するのは森 綾、写真は人物撮影を得意とするカメラ(ウー)マンのヒダキトモコ、そしてPRESIDENT WOMAN Onlineの女性編集者という女ばかりのチームでお届けする新企画である。筆者の視点や偏見、嗜好(しこう)が大いに入ってくるインタビューとなりそうだが、読者の皆さんには写真と共に楽しんでいただければと思っている。

トップバッターとしてご登場いただくのは、トリニティ株式会社代表取締役の星川哲視(ほしかわ・てつし)さん。40歳の経営者である。トリニティは、日本ではまだ珍しいWindows 10 Mobileスマートフォン「NuAns NEO(ニュアンスネオ)」を開発・発売し、最近IT業界で大きな注目を集めている企業だ。トリニティを創業して10年目、星川社長とは果たしてどんな人物なのか……? 本社にお邪魔して、じっくりと話を聞いてきた。

トリニティ株式会社代表取締役 星川哲視さん

爽やかすぎる社長の10年目の挑戦

「30~40代の経営者」とひとことで言ってもいろんな人がいる。会社を大きくすることにこだわる人もいれば、社会的な存在意義を求める人も、世の中への貢献度を重視する人もいるだろう。

星川哲視さんの第一印象は、あまりにも爽やかでひょうひょうとしていた。会社の最寄駅は東武東上線志木駅(埼玉県新座市)。しかもその会社が日本でもまだ珍しいWindows 10 Mobileを搭載したスマートフォンを作ってしまったというから驚いた。

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2016年1月発売の「NuAns NEO」。iPhoneでもAndroidでもなく、Windows 10 Mobileスマートフォンだ。(上)NuAns NEOは、カバーではなくスマホ本体が“着せ替え”られるのが大きな特徴(下)

「トリニティを創業したのは2006年5月です。2016年の4月で10年になるんですよ。今回発売したWindows 10 Mobile搭載スマートフォンの前には、スマホ用アクセサリの輸入・開発・販売で売上をあげてきました」

トリニティは工場を持たない。自分たちが作りたいものを、実際に製造してくれる工場を中国で探すところから始めた。携帯用アクセサリの実績があるとはいえ、スマートフォンを作る難しさは段違いだ。大変な思いをしてまで、なぜ、スマホ本体を自分たちで作ろうと思ったのか。

「会社の10年目という節目に、大きなことをやってみたかったんです。これまで“NuAns(ニュアンス)” という自社ブランドで、iPhoneのアクセサリを作って成功してきました。でも日本におけるiPhoneのシェアは50% 。ということは、あとの50%はiPhoneではないってことなんですよね。その人たちに向けて良い提案ができないか。良い端末がないなら、作っちゃえばどうだろう? と思って」

iPhoneユーザー以外へ提案するスマートフォン。しかし星川さんはそこでAndroidには行かなかった。Androidスマートフォンは、すでに通信キャリアが大手メーカーとがっちり組んでさまざまな商品を販売している。スマートフォンを作るなら、新しいところと組みたかった、と話す。

「無というか、カオスな状態から関わりたかった。Windows 10 Mobile スマホは、新しいことができて面白いです。ディスプレイにつなぐとミニPCになるくらいのものを作りたかったですし。ビジネス的にもマイクロソフトがサポートしてくれたので、作りやすかった」

彼が本当にやりたいのは「Windows 10 Mobile スマホをつくる」ことの先にあるという。それは、その端末を持つ人の「ワークスタイルを変える」ことだ。

ぬくもりのあるアクセサリを続々と

2006年、星川さんはトリニティ株式会社を3人で立ち上げた。

「起業する前は、オーディオの輸入商社にいました。30~40人規模の会社で、レコーディングスタジオや劇場に、プロ向けの機材を卸すような会社です。僕はそこでブランド担当、セールス、マーケティングなどをやっていたので、辞めてからも自分で同じようなことができると思いました。ただ、業務用のオーディオ設備のように1回で1億円が動くといったビジネスではなく、BtoCで、自分自身も使うような製品を扱うビジネスをやりたかったんです」

起業して最初は事務所を借りず、埼玉県新座市の自宅をオフィスにした。それなら初期投資も少ないし、失敗しても痛手は少ない。ちょうどiPodが登場したころで、そのアクセサリやオーディオシステムを輸入して販売した。

「最初は輸入だけだったのですが、2年目くらいから需要が高まり、それだけでは供給していくスピードが追いつかなくなってきた。iPod nanoが出てきたりもしましたから。その頃から、アメリカの展示会で出会った台湾の工場主と一緒に(アクセサリの)製造を始めたんです。7年前からは生産数が追いつかなくなり、より生産量の多い中国の工場に委託するようになりました」

海外ブランドのBlueloungeやCatalystなどの輸入販売に加え、最初に立ち上げた自社ブランドが「Simplism(シンプリズム)」。その後「次元」、「NuAns」といったデジタルガジェット用アクセサリブランドを増やしていった。

「メールチェックひとつとっても、すごく時代が変わりました。昔は家に帰ったらPCを立ち上げてメールを見ていたけれど、今はデバイスと常に一緒に生活して、ベッドやソファやカフェでスマホを見る時代になりましたよね。その時に見える景色が変わったんです。無機質なオフィスではなく、自分の好きなものに囲まれた場所で、仕事ができるようになった。だからスマートフォンのアクセサリも、もっとインテリアとか雑貨に寄った、生活に溶け込むようなものが欲しいんじゃないかなと。そこでデザインチームのTENTと組んだんですよ」

TENTとのプロジェクトで生まれたのが、NuAnsブランド、そしてNuAns NEOだ。モバイルバッテリーやケーブルも、暖かみのあるカーキや黄色。木や皮を使ったスマートフォンケース……星川さんのどこかほっこりした話しぶりは「これを作ってきた人」と思うと違和感がない。

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デザインチームのTENTと組んで開発したNuANSシリーズ。NuAns NEOは、ベッドやソファやカフェなど、日常のシーンに溶け込むような、暖かみのあるデザインに仕上げている。

男女年齢問わず、給与を一律に

自宅で3人で始めた会社はあっという間に手狭になった。

「5人ぐらいになった時に事務所を借りまして、その後、6年前に今のオフィスに引っ越しました。もともと新座が地元で、ずっと新座でやっています。法人税を払うんですから、どうせなら地元に払ったほうがいいじゃないですか。普通のオフィスより面白くできるし、家賃も都内より安い。もともとここは倉庫物件だったんです。だから在庫を下に置いて、上だけリフォームしてオフィスにして」

トリニティは埼玉県新座市にある。本社の1階は現在イタリアンレストランになっており、社員は無料でランチを食べられる(うらやましい!)。

当初はキッチンを作り、みんなでご飯を作って食べていたこともあった。

「社員が10人を超えると、食材を買って作って……と毎日2時間以上かかってしまうので、一度止めちゃったんです。そうしたら、若い社員がカップラーメンとか食べだして、これはダメだなあと。ちょうどその頃、よく行っていた地元のイタリアンレストランが閉店すると聞いて、シェフにうちで料理をしてくれないかと頼んでみたんです。思いきって2014年6月に、1階に食堂を兼ねたイタリアンレストランを作りました。社員はランチが無料で食べられます」

記事冒頭の写真を撮った場所は、実は本社1階のイタリアンレストラン。お昼時に覗いてみると、ランチを食べに来たお客さんで賑わっていた。

現在、社員は14人、役員が3人。うち9人は女性だ。

「うちの給料は男女年齢問わずで全員一律、基本年収427万円。この数字は5年前くらいの、当時の日本の平均年収を元に決めました。つまり、零細企業だけれども年収は日本のど真ん中ということです。今は平均年収がもっと下がっていますので、トリニティの給料は全国平均より上になると思います。たまたまでしょうが、男女比はいつも半々くらいですね。セールスは男性の比率が高いですが、海外セールスやマーケティングは女性が多いです。今も語学ができてコミュニケーション能力のある海外セールス担当、あとサポート担当を募集しています」

9期連続黒字の優良企業。応募者はたくさんありそうだが……。

「転職サイトで、東京に絞り込んで検索する人がまだ多いみたいで。埼玉まで広げて欲しいなあ! 朝、電車は空いてますし、楽ですよ(笑)」。

森 綾(もり・あや)
大阪府大阪市生まれ。スポーツニッポン新聞大阪本社の新聞記者を経てFM802開局時の編成・広報・宣伝のプロデュースを手がける。92年に上京して独立、女性誌を中心にルポ、エッセイ、コラムなどを多数連載。俳優、タレント、作家、アスリート、経営者など様々な分野で活躍する著名人、のべ2000人以上のインタビュー経験をもつ。著書には女性の生き方に関するものが多い。近著は『一流の女(ひと)が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など。http://moriaya.jimdo.com/
ヒダキトモコ
写真家、日本舞台写真家協会会員。幼少期を米国ボストンで過ごす。会社員を経て写真家に転身。現在各種雑誌で表紙・グラビアを撮影中。各種舞台・音楽祭のオフィシャルカメラマン、CD/DVDジャケット写真、アーティスト写真等を担当。また企業広告、ビジネスパーソンの撮影も多数。好きなたべものはお寿司。http://hidaki.weebly.com/