おすすめは「データサイエンティストは私です」宣言
――データサイエンティストになるためには、専門知識が必要でしょうか?
【原田】何しろ新しい職域なので、特別な専門分野の教育が確立されているわけではありません。先ほど、数学的な素養やエンジニアリングの素養が必要と言いましたが、実務で成果が出せるなら分野が偏っていても習熟途中でも構いません。包括的な考え方は知っておくべきですが、今後どんどん良いツール(分析ソフトウェアなど)ができてくるでしょう。これらの道具をうまく使いこなして事業に活用することができれば、そのような役割の果たし方もあるでしょう。
――男女関わらず、将来性のある職能といえそうですね。
【原田】私は「丸の内アナリティクス」という、事業会社でデータ分析に携わっている人たちが集まる勉強会を主宰していますが、女性も多く参画しています。そして今「丸の内アナリティクス」に来ている方々は将来、会社の要職に入っていくと私は考えています。どんな会社でも、データを使って利益に貢献できる余地は幅広く存在していますから。
「市場」は、人の心の動きに伴い動きます。ここ数年で、それがなぜ動くのか、どうしたら動くのかを分析できるほど、データが増えてきています。それまでは「何となく」や「経験値」でしか説明がつかなかったものが、データの形で可視化できるようになってきているのです。今、これほど面白い分野はないと思います。
少しでも関心がある人は、まずは自分がやっている仕事の中で、データを絡めて改善できるところがないか、見回してみるといいと思います。勤め先にまだそうした部署が存在しないようでしたら、覚悟を決めて「この会社のデータサイエンティストは私です」と言ってしまえばいいのです。大企業だけでなく、リソースの少ない中小企業であればなおさら、データサイエンティストが重宝される時代になります。実際、中小企業でもデータサイエンティストが活躍していたり、求人したりするケースが出始めています。今、足を踏み入れておくと、キャリア設計上かなり有利になると思いますよ。
株式会社リクルートライフスタイル ネットビジネス本部 アナリスト。2012年に株式会社リクルートへ入社。人材事業(リクナビNEXT・リクルートエージェント)、販促事業(じゃらん・ホットペッパーグルメ・ホットペッパービューティー)、EC事業(ポンパレモール)にてデータベース改良とアルゴリズム開発を歴任。2013年日本のデータサイエンス技術書の草分け「データサイエンティスト養成読本」執筆。2014年業界団体「丸の内アナリティクス」を立ち上げ主宰。2015年データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤー受賞。早稲田大学創造理工学部招聘教授。
構成=大井明子 撮影=岡村隆広