片足ずつ新しい領域に踏み込む

――データサイエンティストになったきっかけは?

【原田】私は何度か転職していて、今の会社で4社目なのですが、会社を移る度に少しずつ職務の内容が変わって、データサイエンティストのスキルセットを形成したという感じです。転職ごとに、片足ずつ新しい領域に踏み出しながら、キャリアを築いてきたとも言えます。

新卒で入った会社はシンクタンクで、そこで今と同じ「アナリスト」の名刺を持つようになりました。「情報産業システム」を扱う部署で、生態認証や非接触ICカード、電子ペーパーなどに関する調査を行い、白書を作っていました。まだ、インターネットの用途や流れる情報量が今ほどない時代、テーマはデジタルですが、そこで扱われていたデータはスモールデータです。そのテーマ全体の分析設計を行い、関係者にヒアリングするという、アナログな作業が中心でした。

しかし「大規模データ」や「データ爆発」という言葉が聞かれるようになってきて、データそのものを扱うITの分野にもキャリアの範囲を広げたいと考えて、2010年に「リサーチャー兼ディレクター」という肩書きでWeb制作の会社に転職しました。そこでは、Web サイトでのユーザーの視線の動きや行動について、データを集めて科学的に解析しながら、より使いやすいサイト作りを追求する仕事をしました。

次に転職したのは、立ち上がったばかりの、アメリカのネットサービスベンチャー企業の日本法人でした。前職では、Webサイトの画面に関する仕事が中心でしたが、ここでは事業に関わるデータすべてを見て、事業戦略を立案しました。データをもとに、全ての部署に対しどんな数値を目標とすべきかKPI(Key Performance Indicators、重要業績評価指標)を定め、進捗をモニターしました。データを使って会社の成長に貢献するという、今のデータサイエンティストの仕事にぐっと近づいたんです。

リクルートでは、これまでやっていたことすべてを活かした仕事をしていることになりますね。私は事業戦略もWebサイトUI(user interface)もデータベースも実務で研さんを積んできました。越境的な能力開発の場を求めないと、データを情報に変え、事業戦略に活かすという仕事はできないと思います。