【2】強調の間
――「お・も・て・な・し」は強調表現。秒単位の必勝テク
間の二つ目は、更に一歩進んで、聞き手に特に重要なことを強調して伝えるための「強調の間」です。強調したい言葉の前に2秒から3秒、後ろに1秒の間をとります。例えば、重要な数字、キーワードなど、資料では文字を大きくしたり、色を変えたりして強調表現する部分の前後に間を入れるのです。
英語のプレゼンテーションでは、キーワードを話しながら、右手と左手の人差し指と中指二本で、そのキーワードを挟むように動かすジェスチャーをすることがあります。これは「ダブルコーテーションマークで囲んである重要なキーワードですよ」という意味のジェスチャーです。ダブルコーテーションマークは、日本語なら「 」=カギ括弧です。ダブルコーテーションマークの“”という記号を指の動きで表現しているわけです。資料上やジェスチャーなどのビジュアル表現ではなく、話の中で重要な語を強調するためには、間を前後に入れることで表現します。
例えば、「我々の部門に求められているもの。それは(2-3秒の間)意識改革です! (1-2秒の間)」というふうに強調したい語の前後に入れます。前だけでなく、後に入れることで、強調したい言葉を聞き手が頭の中で反芻する時間ができ、より記憶に残るのです。すぐに次の説明をかぶせてしまうと、そちらに上書きされてしまいます。キーワードを聞き手の頭の中に刻みこむような気持ちで、たっぷりと間をとりましょう。
「強調の間」の好例が、東京オリンピック招致のプレゼンテーションの中で滝川クリステルさんが使った「お・も・て・な・し」というキーワードを表現した際の間のとり方です。言葉の前後だけではなく、ひらがなの一つひとつの間にも間を入れることでキーワードが更に強調されました。ジェスチャーの効果もありますが、あの言い方は多くの人の記憶に残ったのではないでしょうか? 結果、2013年の流行語大賞になるほどのインパクトがありましたね。
強調の間を理解していただくために、もう一つ分かりやすい例を挙げます。こちらも同年の流行語大賞になった言葉です。カリスマ予備校講師の林先生の「いつやるの? 今でしょ!」というキャッチフレーズも間を上手に使っています。「いつやるの?」の後に数秒の間があるのです。この間がなかったら、「今でしょ!」は引き立ちません。余談ですが、林先生は間の長さを場によって変えているそうです。バラエティやクイズ番組はとてもテンポのよい会話が飛び交うので、あまり長い間をとらず、早めに言うとのこと。このように間を使いこなすことができたら、かなりのプレゼンテーション上級者です。