――都内に2人かどうかはともかく、まあ、若いのに年収が高くて遊びもいろいろ知っていて、という男性はそうそういないですよね。しかもそれで自分を好きになってくれる人と出会うなんて、ユニコーンを探すようなものかも。

【川崎】まずいないでしょう? そんなこと言っていたら、とても結婚できないんです。これはつまり、自分の欲望のプロファイリングができてないということです。本当はどういう結婚生活を送りたいのか、そこを具体的に落とし込んでいないから、男性像が見えないんですね。雑誌とか、少女漫画を見て、砂糖菓子みたいなイメージをふわ~っと持っているだけ。

それをヒアリングして落とし込んでいくと、年に1回くらいは2人で海外旅行に行く生活がしたい、子どもはすごい進学塾に入れなくてもいいけど、自分がピアノを習ってたから、そういう習い事は週に2回くらいはやらせてあげたい……といった感じで、具体的な希望がどんどん出てくるんです。そうしたら「あなたは年収400万円だよね。男性の年収が450万円なら、2人で850万円世帯だからその希望は十分かなえられるよね」という話をしていくわけです。すみません、いつもお金の話をして(笑)。

【上】『結婚したい女子のためのハンティング・レッスン』川崎貴子(総合法令出版)』【下】『<40男>はなぜ嫌われるか』田中俊之(イースト新書)

【田中】お金の話は重要ですよ。男性1人の収入じゃなくて、2人で足したらいくらになるか、そう考えればいい。このことに、もっとみんな気づくといいと思います。

相手に条件をいっぱい付ける人は多いですけど、それって無駄な気がしてます。なぜなら、仮に条件に合った人を見つけられたとしても、絶対「思っていたのと違う!」となるから。自分が思うものと一致する人じゃないとイヤだ、という人は、なにかと生きづらいと思うんですよね。結婚だけじゃないです。会社に入っても「こんなの、私がやりたかったことと違う」とか、付きあっても「思っていたのと違う」ということにきっとなります。

さきほどから何回も「現実を見たほうがいいんじゃないですか」というアドバイスが出てきていますが、そもそも「思っていたのと違う」に決まっているんです。仕事にせよ、恋愛にせよ、頭のなかのイメージ通りに進むほうが怖いですよ。ありえない。だから、あらかじめ条件を設定して、それに当てはめて現実を見ようとする人って、生きづらいんじゃないかな、と僕は思います。

●“女のプロ”川崎貴子ד男性学”田中俊之 対談記事一覧
第1回 結婚を不安視する男、幻想から離れられない女
http://woman.president.jp/articles/-/866
第2回  「結婚はコスパが悪い」という男性が結婚を意識するのはどんなとき?
http://woman.president.jp/articles/-/893
第3回 上司をおだてることは、会社の不利益である
http://woman.president.jp/articles/-/896
第4回 女性たちよ、管理職になれ!
http://woman.president.jp/articles/-/903
第5回 結婚したいのにできない人に必要なこと
http://woman.president.jp/articles/-/925
第6回 「減点法」コミュニケーションの行く先は、破局しかない
http://woman.president.jp/articles/-/926
第7回 男はつらいよ~男は「競争」、女は「協調」
http://woman.president.jp/articles/-/927
最終回 「夫が家事を主体的にやってくれない!」となぜ怒ってはいけないのか
http://woman.president.jp/articles/-/928
川崎貴子
1997年に女性に特化した人材コンサルティング会社、株式会社ジョヤンテを設立。経営者歴18年。女性の裏と表を知り尽くし、人生相談にのりフォローしてきた女性は1万人以上。プライベートではベンチャー経営者と結婚するも離婚、そして8歳年下のダンサーと2008年に再婚を経験、「女のプロ」の異名を取る。9歳と2歳の娘を持つワーキングマザーでもある。著書に、『結婚したい女子のための ハンティング・レッスン』(総合法令出版)、『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。』(KKベストセラーズ)など。
田中俊之
武蔵大学社会学部助教、博士(社会学)。1975年生まれ。社会学・男性学・キャリア教育論を主な研究分野とする。2014年度武蔵大学学生授業アンケートによる授業評価ナンバー1教員。男性学の視点から男性の生き方の見直しをすすめ、多様な生き方を可能にする社会を提言する論客としてメディアでも活躍中。著書に、『<40男>はなぜ嫌われるか』(イースト新書)、『男がつらいよ 絶望の時代の希望の男性学』(KADOKAWA)など。

構成=すずまり(鈴木麻里子)