男性に言うとモテる「さしすせそ」

【田中】女性が男性に言うとモテる「さしすせそ」というのがあるんです。「さすが」「知らなかった」「すごい」「先輩だから特別」「そうなんですか」なんですけど、つまりそれは“女性側が馬鹿なふりをするか、相手をすごいと持ち上げておけば、男性とのコミュニケーションは上手くいきますよ”というアドバイスなんですよ。でも実はこれって大問題なんです。

男性と女性の関係が、いつまでも上と下で変わらないからというのもそうですが、もう1つ。男性本人はバカだから気付かないわけです。「すごい」と言われたら、「おれはすごい!」と思い、「さすが」と言われたら「さすがだろ?」と思っている。「知らなかった」って答えたら、「ほら、知らなかっただろ!」と思っちゃうわけです。大抵の男はみんなそう思ってしまう。つまり、転落していった人だけの話じゃない。

【川崎】専業主婦の奥さんの立場になってみたら、おだててでも何でもいいから、働いてくれさえすれば別にいいか、というのが、最後の砦なんでしょうね。夫婦のコミュニケーションはあまりよくないし、夫は子育ても何も気遣ってくれないけど、でも最低働いてくれていればいいや、という気持ち。それすらなくなって、家事もやらなくなって、だんだん転落されたらたまらないぞ、という気持ちがあるから、たぶん夫を褒めそやすのって専業主婦の奥さんのほうがうまいと思うんです。

――妻は仕事をしておらず、夫が外で稼いでお金を持ってくることが大事という家庭なら、そうですね。

【川崎】見えない手でお尻をひっぱたいてるとでも言いましょうか……。でもキャリア女性たちは時間的にもスキル的にもそれができない。だから単にパートナーを甘やかしてしまい、会社に行っているだけで仕事ができない人たちよりも、さらに頑張らない人を作ってしまうのかもしれませんね。

その「さしすせそ」で旦那さんが働いているというのもいいことだとは思いませんが、それで彼女たちが幸せじゃないと思うんだったら、やっぱり大問題だと思いますね。だからコミュニケーションが大事じゃないかと思います。

――さっきの「さしすせそ」って、いわゆる「合コンさしすせそ」とほぼ同じですよね。「女の子がこういう返事をしておけば、男性はいい気分になってくれるよ」という合コンの鉄板ワード。上司部下という関係じゃなくても、女性はついそうしてしまうっていうのは、確かにあるかもしれないですね。同世代同士でも無意識にやってしまう。

【田中】そう。大学生でもそうなんですよ。でも、男女が対等にやっていくなら、そんな必要はないはずですよね。

●“女のプロ”川崎貴子ד男性学”田中俊之 対談記事一覧
第1回 結婚を不安視する男、幻想から離れられない女
http://woman.president.jp/articles/-/866
第2回  「結婚はコスパが悪い」という男性が結婚を意識するのはどんなとき?
http://woman.president.jp/articles/-/893
第3回 上司をおだてることは、会社の不利益である
http://woman.president.jp/articles/-/896
第4回 女性たちよ、管理職になれ!
http://woman.president.jp/articles/-/903
第5回 結婚したいのにできない人に必要なこと
http://woman.president.jp/articles/-/925
第6回 「減点法」コミュニケーションの行く先は、破局しかない
http://woman.president.jp/articles/-/926
第7回 男はつらいよ~男は「競争」、女は「協調」
http://woman.president.jp/articles/-/927
最終回 「夫が家事を主体的にやってくれない!」となぜ怒ってはいけないのか
http://woman.president.jp/articles/-/928
川崎貴子
1997年に女性に特化した人材コンサルティング会社、株式会社ジョヤンテを設立。経営者歴18年。女性の裏と表を知り尽くし、人生相談にのりフォローしてきた女性は1万人以上。プライベートではベンチャー経営者と結婚するも離婚、そして8歳年下のダンサーと2008年に再婚を経験、「女のプロ」の異名を取る。9歳と2歳の娘を持つワーキングマザーでもある。著書に、『結婚したい女子のための ハンティング・レッスン』(総合法令出版)、『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。』(KKベストセラーズ)など。
田中俊之
武蔵大学社会学部助教、博士(社会学)。1975年生まれ。社会学・男性学・キャリア教育論を主な研究分野とする。2014年度武蔵大学学生授業アンケートによる授業評価ナンバー1教員。男性学の視点から男性の生き方の見直しをすすめ、多様な生き方を可能にする社会を提言する論客としてメディアでも活躍中。著書に、『<40男>はなぜ嫌われるか』(イースト新書)、『男がつらいよ 絶望の時代の希望の男性学』(KADOKAWA)など。

構成=すずまり(鈴木麻里子)