ITで働く女性を育成! ロールモデルとしての役割

世界中の優秀な頭脳が集まると言われているシリコンバレーでは、人材の獲得競争が過熱している。加えてIT業界の女性就労者の少なさは、先進をいくアメリカでも例外ではない。この業界の女性リーダーとしてロールモデル的な立場であるジャネルは、女性たちにもっとこの業界で活躍してほしいと願い、若手育成のプロジェクトにも積極的に携わっている。

「経験者の採用ももちろんですが、IT業界は女性自体が圧倒的に少ないのが現状です。それは、若い頃にそういった分野に触れる機会が少なく、興味を持つ人が少ないから。ですから、高校生から大人までさまざまなレベルのインターンやアカデミーのプログラムを用意し、提供しています。さらに私たちは、いろいろな大学に出向いて女子学生に話をしたり、コンピューター・サイエンスに興味を持つようなイベントなどを行っています。これは、我が社だけでなく業界全体の将来にとって重要なこと。もっと若い女子たちの裾野を広げていけるように、これからも取り組んでいきたいですね」

彼女自身も、キャリアに悩んでいた頃、仕事に困った時などに相談に乗ってくれ、アドバイスをしてくれる「メンター」に助けられてきた。アドバイスをする側を「メンター」、受ける側を「メンティ」と言うが、仕事の利害関係などと関係なく信頼関係で成り立つこの育成の関係性は、日本ではまだ普及しきっていない状況だ。Facebookでは、社内にメンタープログラムがあり、メンターとメンティを相性の合う者同士でマッチングができるよう工夫されている。また、その関係がうまくいくように継続的に両者の教育も行っている。

「Facebookでは、2人の相性のマッチングを大事にしているので、必ずしも女性のメンターが女性とは限りません。今キャリアを積んでいる多くの女性は、男性のロールモデルやメンターを見習ってきたのです。ビジネスの経験の多い男性上司からは女性も学ぶことは多いはず。特に日本の企業は、メンターとの関係構築というのがまだまだ浸透していないようなので、メンター制度の導入・促進を図るといいでしょうね」

これまで周囲に助けてもらった経験から、自分もこれからはメンターとして、ロールモデルとして女性たちの力になりたいという意識を強く持っているジャネル。プライベートでは、発展途上国の女子をサポートする活動にも積極的に携わっている。ただ、自分のキャリアだけでなく、若者への啓蒙活動など、社会的な還元を常に考え実行していく彼女は、確かに「人と人をつないでいく人」だった。(文中敬称略)

【次回予告】後編「Facebookが求めるのはどんな人材?」は10月8日公開です。

岩辺みどり
編集・ライター。大手出版社の雑誌記者を経てフリー。3カ国への留学経験と20カ国以上へのバックパッカー経験を持つ。ビジネスからライフスタイル、女性活用、教育まで幅広く取材を行う。

撮影=たかはしじゅんいち