ディーリング経験でトイレの速い人に
私が入社したのは89年(平成元年)で、その年の暮れには日経平均が3万9,000円に届こうとしていました。その後マーケットは坂道を転がり落ちるように下がり続け、長いトンネルに入りました。大規模な金融制度改革(金融ビッグバン)により株式委託手数料が自由化されるなど、業界を取り巻く環境も大きく変わっていきました。大和証券は、お客さまの資産純増を第一とする資産コンサルティング型営業推進に舵を切った他、新しいコンセプトのインターネット銀行を開業するなど、新たなビジネスモデルを展開してきましたが、時代を先取りしてきたところがあると感じています。最近はマーケットも堅調で、「春って来るんだな」という気持ちです(笑)。
入社時に配属されたのは債券部で、希望どおりでした。ディーリングルームで債券の売買にかかわりながら、値動きをどうとらえるか、その裏で人の心理はどう動くかなどを学びました。1日でも休むと相場の動きがしっくりきません。相場が読めないのです。なぜこのような動きとなるのか自分なりの説明もつけられなくなるため、夏休み明けに相場に向かうときなどは重たい気持ちでした。一方、想定どおりの相場の動きとなり収益に貢献できている際の達成感は何とも言いがたいものでした。
新人のころは目の前にずらっと並ぶワンタッチフォンが怖かったですね。それぞれが特定の投資家とつながっている電話です。受話器を取っても相手は早口で、最初は何を言っているのか聞き取れませんでした。売りと買いの間違い、金額の間違いは許されないので、常に緊張感に包まれていました。
そんな中、ちょっと困ったのがトイレです。相場は動いていますし、席をはずした間に電話が入るかもしれないと思うと、なかなかトイレに行けません。我慢の限界、そんなときは「すみません。トイレに行ってきます!」と叫び、走って行って戻ります。いまも周りから「トイレが速いね」と言われますが、その名残かな(笑)。