さらに私を苦しめたのが、スケートをやめた自分をまったく想像できなかったこと。それを考えると怖くて。初めて心身ともに健康であることがいかに大切かを痛感しました。

晩成型ですが完璧主義者でもある私は、弱い自分を見つめるのが本当に嫌でした。完璧にできない私をみんなが嫌うんじゃないかと心配もしました。だけど、弱い部分を見せても、周囲の人たちは助けてくれたんです。それがわかったら「あ、もっと等身大でいていいんだ」と力みがなくなり、つらいけれど「自分は今、病気」と、やっと受け止められました。

結果的に、母やコーチが無理に急がせずに見守ってくれたおかげもあり、半年という意外に短い期間で、少しずつですが、現役生活に戻れました。

あの時、私は非常に危険な状態でした。スケートがなかったらどう生きていけばいいかまったくわからなかった。幸い短期間で戻れたからいいものの、もし戻れなかったら私はどうなっていたか……。想像するとぞっとします。

けれどあの挫折で「昔の自分に戻りたい」という凝り固まった考えから離れられたのは良かったですね。なぜなら「過去の自分」にとらわれすぎると「今の自分」に向き合えません。絶対に人は過去に戻れません。「ここからどうするか」に向き合うしかない。考え方も経験も体も環境も前とは違っているのだから、現実を見るしかないんです。そのとき、「自分に寄り添う」ことを学びました。ベッドの上でその考えが腹に落ちたとき――。それが私というフィギュアスケーターの「本当のスタート」になったんだと思います。