ダメ企業を見限って「寿転職」
「残業禁止」を徹底し、長時間労働の是正に成功した2社の話を聞く機会がありましたが、1社は「20時以降の残業をなくしたら、身近の女性総合職が出産ラッシュ」と言っていました。もう1社も「社員の子どもが増えた」と報告していました。働き方改革をしてマタハラを防止することは少子化対策としても有効です。
また働き方改革に着手してすでに5年の大和証券は、男女ともに学生が入社したい企業として人気が高い。人材獲得の意味でもワークライフバランスが戦力となります。
マタハラが起こる職場を放置しておくと、妊娠・出産した本人だけでなく、その前の世代、今後の企業を担う人材に大きな影響があります。独身の女性社員は「今はいいけれど、結婚したら……」と先が見えないキャリアに、モチベーションが落ちます。20代の女性社員は営業などの大きな戦力ですから、彼女たちのモチベーションは業績にも影響するでしょう。
「20代女性を活性化させてほしい」という講演依頼をよくいただきますが、本当に研修するべきは本人たちではなく、「女性が未来に絶望するような職場」を作っている経営層なのです。
いずれ彼女たちは黙って転職していきます。最近は結婚と同時にワークライフバランスの悪い職場を見限る「寿転職」の例をよく目にします。転職サイトでは結婚と同時に「金融総合職から金融一般職に変わりたい」という転職依頼もあるそうです。
今までの「24時間働く社員がいい社員」「仕事は何よりも優先」「プライベートで職場に迷惑をかけてはいけない」という「働く風土」は、今、大きな変化を迫られています。
ワーキングマザー、イクメン、そしてマタハラ被害者と、声をあげる人が増え、固い岩盤のような「昭和的職場」に風穴をあけようとする動きが目立ちます。