出産直後、赤字を黒字に

ワイノット日本法人が好業績だったのは、法人相手のビジネスでは料金を固定でもらったからです。当時のネット広告の世界は、その広告を見てモノが売れたときに一定の分配率で広告主と売上金をシェアする方法が多いのですが、グリーティングカードの場合だと時期によって波があり過ぎます。クリスマスや新年のときはパーッと売上が伸びますが、それ以外のときはあまり需要がありません。相手は嫌がりましたけど、説き伏せて固定料金でもらうようにしたのです。

それが成功した2001年頃、株式市場に上場を考えましたが、ネットバブルがはじけ、上場に必要と言われた利益3億円に1.5億円ほど足りませんでした。別の会社を買収するか、新規事業で売上を立てるかと頭をひねりましたが、どちらも難しそうでした。

今の社長、三木谷とは同じIT業界ですから、当時いろんな場所で会っていました。早い段階からワイノットに興味を示してもらい、ほぼ同世代ですから話も合います。そこで「買ってください」とお願いし、2002年9月末に資産価値の査定が終わり、私が代表取締役のまま楽天に吸収されるのですが、そのとき私は臨月で翌月に娘を出産することになります。

子どもを産んでも、私は代表取締役なので、3週間だけ仕事を離れましたが、社長業務として、その間も取締役会を主催し、出席していました。でもその月に売り上げにアカが出たんです。取締役会で三木谷から「赤字会社を買ったつもりはない。初めて黒字会社を買収したと自慢していたのにどうするんだ」と言われ、カチンときました。なので、「私が営業に行く」と仕事に復帰して翌月には挽回しました。