信頼で売る究極の事業

楽天 執行役員 CSR部 部長 
黒坂三重さん

実はワイノットに移る直前まで、2社の外資系企業の日本法人立ち上げに関わってきたことから、燃え尽き感がありました。マクロメディア時代には、夜中にサンフランシスコの本社と国際電話でやりとりし、顧客へのプレゼンから広報業務、本社役員の通訳まで、社長業以外のほぼ全て何から何まで自分で受け持っていたのが理由でした。マクロメディア退職後に「これから何しようかな」と起業も含め悩んでいたときに、ワイノットの立ち上げ話を聞いてスーッと頭のなかに入ってくるものがありました。

自分のキャリアは、クルマという目に見える形があって相場もしっかりしている固いビジネスから、ソフトウェアのようにパッケージはあっても説明しないと製品のよさが伝わらないビジネスへと移りました。

「次に何をやる?」と考えれば、究極は形のないサービスを売ることです。自分を信じてもらって「これが100万円です」と言ったら、「黒坂さんがそう言うなら100万円で買いましょう」と応じてもらえる。そういうビジネスを思い描いていました。ネット上のグリーティングカードサービスは、まさに提案や信頼で売る事業でした。

1年ほどで680万人の会員を獲得したのはちょっと自慢です。その頃、アメリカ本社は国内市場での上場をめざしていて、私は増資のために「日本で1億円集めてほしい」と言われました。

そこで外資系のベンチャーキャピタルや監査法人をまわって事業内容を説明すると、「アメリカではなく、日本ならいいですよ。やらない? お金は出すよ」と言われて、「まいったな」と思いました。

最終的には1億円集めてミッションは果たしましたが、直後に「日本法人はこれからどう生き残っていこうか」と考えはじめました。というのも、売上がよかったのは日本市場だけだったんです。