はっきりと要望する場合

施設長や保育士と温和なコミュニケーションと相互理解のもとで問題を解決できることがいちばんです。多少カチンとくることがあっても、なるべく友好的な話し合いをもってほしいと思います。

保育園に「モノ申したいときの作法」として、まず「理解しようとする姿勢をもつ」「子どもはともに育つという前提をもつ」ということを挙げました。しかし、それでは通じない場合には、保護者としてはっきり要望することも必要になります。その場合にポイントになることを以下の7つの作法として挙げておきます。

(1)1人でかかえこまない
できるならば、父母会や複数の父母で話し合って、問題意識を共有しておくことが望ましい。家庭内(夫婦)でも共有したい。要望書などを出す場合は、父母会や父母有志の連名などで出せるとなおよい。

(2)記録をとる
問題の出来事、保育士や施設長の言動について日時も含め事実を記録し、問題を具体的事実で指摘するようにする。関係が悪化したとき保護者側に暴言があると「モンスターペアレント」扱いされてしまうことがあるので注意。記録をとることで冷静になれる。

(3)どこに訴えるか
施設長の問題処理能力に期待できる場合は施設長に、そうでなければ、事業者の本部(本社)に。これらの当事者が誠実でない場合は、市区町村の担当課に相談する。私立であっても認可保育園(保育所)は市区町村の事業(民間へは広義の委託がされている)なので、市区町村は運営に関与すべき立場にある。認定こども園・小規模保育・家庭的保育は施設と利用者の直接契約だが、給付費を受けて運営されており(公的契約という)、市区町村が無関係でいることはできない。自治体の助成を受ける認可外保育施設(認証保育所)は公的契約ではないが、公費を受けて運営されていることを理由に指導を求める。

(4)問題を整理する
問題点と改善してほしいことを文章化する。関係が悪化すると大人同士の関係に神経が集中しがちだが、何よりも子どものために改善する必要があるということを要望の骨子にする。その関連で、職員の言動を問題にすることはあってもよいが、それだけになると、第三者に問題の本質が伝わりにくくなる。

(5)どこまで求めるか
文書等で整合性のある要望が出された場合、事業者から「改善の努力をする」等の回答が得られる場合も多い。できれば具体的な約束をとりつけられるとよいが、いろいろなケースがあるだろう。市区町村の担当者に立ち合ってもらい、責任をもって指導・支援するように求めるのも有効かもしれない。

(6)その他の相談機関
園の苦情窓口に苦情を提出したけれども当事者同士で解決しないという場合は、都道府県社会福祉協議会に設けられた運営適正化委員会に調査・助言・勧告を依頼することができる。また、各地の消費生活センターでは、契約に関するトラブルを中心に扱っており、保育施設等についても相談を受け付けてくれる。ただし、保育内容については、踏み込めない場合も多い。

(7)退園を迫られたら
認可保育園は市区町村の事業なので、原則として入退園は事業者だけで決めることはできない。市区町村との協議が必要。その他の保育施設は、施設と保護者の直接契約だが、契約には退園となる場合の取り決めも書かれているはずなので、確認する。いずれにしても、退園を迫られた場合は市区町村に相談したほうがよい。

ずいぶん厳しい内容になってしまいました。

このところ認可保育園の新設が多く、不慣れな施設長や保育士がふえているのかもしれないと思う出来事がふえています。最終的には、保育園に成長してもらうしかないので、そのために保護者から厳しい意見が出ることもときには必要ではないかと思っています。

保育園を考える親の会代表 普光院亜紀
1956年、兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。出版社勤務を経てフリーランスライターに。93年より「保育園を考える親の会」代表(http://www.eqg.org/oyanokai/)。出版社勤務当時は自身も2人の子どもを保育園などに預けて働く。現在は、国や自治体の保育関係の委員、大学講師も務める。著書に『共働き子育て入門』『共働き子育てを成功させる5つの鉄則』(ともに集英社)、保育園を考える親の会編で『働くママ&パパの子育て110の知恵』(医学通信社)、『はじめての保育園』(主婦と生活社)ほか多数。