男社会の息苦しさ

ええっと、お題は何でしたっけ? 「管理職になりたくない女性たちの本音」ですね。うーん、僕は女性ではないのでよくわかりませんけれど、「精神的にも時間的にも負担が増えそうだから」という恐れが先行しているのでしょう。

でも、もっと根本的な理由もあると思います。それは、マネージャーという言葉にしみついた男社会(サル山社会)の息苦しさです。

学生時代の部活動におけるヒエラルキーは、エース、レギュラー、補欠、マネージャーの順でした。企業に入ると、マネージャー、総合職、一般職、派遣・アルバイトの順になる。権限や実力といった「力」によって階層が決まるんですね。わかりやすいけれど、自由度は低い世界です。

ちなみに、ファーストリテイリングの柳井社長は、先月11日に従業員4100人を集めて、<私は数多くの失敗をしてきましたが、その中で一番大きな失敗が、「店長」を主役とした会社にしようとしたことでした。そうではなくて「店舗のスタッフ一人ひとり」を主役にする。そのために我々が全員でサポートしていく>(日経ビジネスオンラインより抜粋)と語りました。本当に一人ひとりが主役ならば、「それはどうかと思います。やっぱり会社の主役はあなたで、ユニクロ店舗の主役は店長でしょう。責任転嫁はやめてください」と反論できるはずですが、そんな自由闊達な雰囲気はなさそうです。

高校野球の男子マネージャーに学べ

僕は女性たちが現在の企業社会におけるマネージャーになることが必ずしもいいことだとは思いません。数少ない女性マネージャーたちを見ていると、離れ小島の立派な部長席に寂しそうに座っていたりするからです。かといって、運動部のお飾り的なマネージャーもひどい話ですけどね。

実現可能で夢のある目標を設定し、メンバー一人ひとりの体調や状況を気遣い、丁寧に進捗管理し、必要に応じて叱咤激励し、みんなが働きやすい環境を整える――。これが裏方であるマネージャーの仕事なのであれば、むしろ女性に向いている職業だと僕は思います。そのためには「マネージャー」という言葉の再定義が必要です。

女性管理職を増やすにはどうすべきか。女性たちの気持ちを持ち上げる前に、ドラッカーの『マネジメント』が好きなおじさんたちが高校野球の男子マネージャーになってみることから始めるべきだと思います。

大宮冬洋
1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に就職。退職後、編集プロダクションを経て、2002年よりフリーライターに。ビジネス誌や料理誌などで幅広く活躍。著書に『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ぱる出版)、共著に『30代未婚男』(生活人新書)などがある。
実験くんの食生活ブログ http://syokulife.exblog.jp/