アップルもエヌビディアも頼る受託構図

TSMCの大きな強みは、顧客基盤です。現在、TSMCには世界中の大手半導体設計企業が製造を委託しており、顧客リストにはアップル、エヌビディア、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ、クアルコム、ブロードコム、メディアテックなど錚々たる企業が並びます。

中でもアップルはTSMC最大顧客の中の1社で、iPhoneやMacに搭載されるアップル独自設計チップ(AシリーズやMシリーズ)は、すべてTSMCが受託生産しています。アップルは常にTSMCの最新プロセス(5nmや3nmなど)を真っ先に採用する重要顧客なのです。

また、近年は空前のAIブームに伴い、エヌビディアやアドバンスト・マイクロ・デバイセズといったHPC(ハイ・パフォーマンス・コンピューティングの略で、超高速で大量計算を行うためのコンピュータ技術やシステム)向け半導体の需要が急増しています。

TSMCはエヌビディアのGPU(※1)やアドバンスト・マイクロ・デバイセズのデータセンター/AI 向けアクセラレータ(※2)といった最先端半導体チップの製造を一手に担っており、2024年にはTSMCの売上高の半分以上がHPC向けチップとなり、スマホ向けを初めて逆転しています。

※1生成AI向け「H100」など ※2AI向けアクセラレータ(コンピュータ処理を高速化するため、特定の計算だけを速くする専用チップ

要するに、AI時代の「頭脳」となる半導体も、TSMC抜きにはつくれない状況なのです。事実、最新のGPUやCPUといった7nm以下(※)の最先端プロセスでつくられる半導体チップの生産は、その9割以上がTSMCに集中しているともいわれています。

(※)1nmは0.000001mm

このような構図から、アップルもエヌビディアも、「TSMCがチップをつくってくれなければ製品を売れない」ほどの依存関係にあります。

たとえばエヌビディア創業者のジェンスン・フアン(黄仁勲)社長兼CEO(革ジャンを愛用しているため、通称「革ジャン」)は、2024年6月に台北で開催された世界最大のコンピュータ見本市「COMPUTEX TAIPEI 2024」の講演で、「TSMCなくして我が社なし」と語っています。

ジェンスン・フアン社長兼CEO
ジェンスン・フアン社長兼CEO(写真=首相官邸/GODL-India/Wikimedia Commons)

エヌビディアの競合のアドバンスト・マイクロ・デバイセズも、CPU・GPUの製造をTSMCに全面的に託しています。前述したアップルもTSMCのヘビーユーザーですが、最新技術を独占活用するため、2026年の「2nmプロセス」について、TSMC生産能力の過半を早々に確保したとの報道もあります。

このように、世界のテック業界の巨頭たちがTSMCに殺到する構図そのものが、同社の揺るぎない競争力を物語っています。