TSMCが“独り勝ち”する理由

現在、TSMCが世界のファウンドリ市場を席巻しています。2025年第2四半期のデータでは、TSMC単体で世界シェア7割という驚異的な占有率に達しました。桁外れの「独り勝ち」状態です。

競合他社と比較すると、2位の韓国のサムスン電子(ファウンドリ部門)は7%、3位の中国のSMICが5%程度にすぎず、TSMCと他社との差は歴然としています。この圧倒的な存在感から、半導体受託生産業界は「TSMCによる寡占市場」と評されることもあります。

【図表1】台湾半導体メーカーの世界シェア
出典=経産省

TSMC台頭の背景には、創業者であるモリス・チャン(張忠謀)氏の先見性ある経営判断がありました。チャン氏は、テキサス・インストゥルメンツ(米国)で長年、半導体開発に携わったのち、1987年に台湾政府の後押しでTSMCを創業します。当時、すでに半導体工場の建設コストが高騰し、1社で設計から製造までを賄うモデルは限界を迎えつつありました。そこに着目したチャン氏は、製造専門の受託に徹するビジネスモデルを世界で初めて確立したのです。

自社で製品を持たず、顧客のチップ製造に特化することで、「顧客と競合しない」という信頼関係を築き、複数企業から広く受注を獲得する戦略です。TSMCは創業当初から、このモデルに賛同する顧客を多数集め、2024年の売上高は900億ドルに達し、メモリを除く世界の半導体の4分の1以上がTSMCの工場で生産されていると目されるほどです。

さらに、TSMCは今も毎年、巨額の設備投資と最先端技術開発を続けており、この面でも他社を引き離しています。2024年の設備投資額は年間300億ドル(1ドル150円換算で4.5兆円。これはトヨタ自動車の2025年3月期の「当期純利益」〔4.77兆円〕に匹敵します)を超えているとされ、競合他社の数倍です。その投資が新たな技術優位を生み出し、「巨人TSMCがますます強くなる自己強化ループ」が完成しています。

現在の会長兼CEOであるシーシー・ウェイ(魏哲家)氏も「顧客ニーズと各国政府の支援を見極めつつ、グローバル展開を判断する」と述べるなど、一貫して顧客本位・技術先行の経営スタンスを貫いています。

シーシー・ウェイ会長兼CEO
シーシー・ウェイ会長兼CEO(写真=王玉青/大統領府/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons)

このようにして培われた信頼と技術力により、TSMCはファウンドリ市場の王者として揺るぎない地位を築いています。