「1兆円」を目指す理由は…
ここまで見ると、食品スーパーがなぜ規模を追求するのかという疑問が浮かぶ。2026年2月期のライフの売上高は8809億円。アルビスの売上高は約1000億円であり、単純合算すれば約9800億円になる。ブルーゾーンHDもグループ売上高1兆円体制を目指している。
「1兆円」を巡る競争が始まっている。しかし、これは売上高ランキングの順位争いではない。重要なのは、1兆円の販売規模がもたらす「調達力」だ。
スーパーは商品を仕入れて販売する産業だ。取扱量が大きくなれば、メーカーや卸売業者との商談力も大きくなる。PB(プライベートブランド)の商品開発でも、生産ロットを確保しやすい。包装資材、店舗設備、システム、決済、物流など、共同化によるコスト削減余地も広がる。
インフレ時代に重要な調達する力
この調達力は、いま特に重要になっている。原材料価格、人件費、物流費、電気代、建築費。スーパーを取り巻くあらゆるコストが上がっているが、一方で消費者は物価高で節約志向を強めている。コストが上がったからといって、すべてを値上げに転嫁すれば客離れを招く。
スーパーにとって、「いくらで売るか」以上に、「いくらで仕入れるか」が重要になる。そして、さらにその先には、「いくらでつくるか」「いくらで運ぶか」という問題がある。
だから大手スーパーは規模を大きくしようとしている。
「安く売る力」の源泉は、「安く仕入れ、安くつくり、安く運ぶ力」にある。これこそ1兆円競争の本質だ。
製販一体が求める垂直型M&A
そう考えると、ライフによるアルビス買収の次に何が起きるかも見えてくる。スーパーがスーパーを買うのは「水平的M&A」である。店舗数が増える。売上高が増える。商品調達量が増える。
しかし1兆円規模まで大きくなれば、次に経営者が考えるのは、「この巨大な販売力を、どう利益に変えるか」だ。
そこで視線は店舗からサプライチェーンの川上へ向かう。食品製造、生鮮加工、プロセスセンター、物流、原材料調達などが、その対象となる。今後は、「スーパー+スーパー」だけではなく、「スーパー+食品メーカー」「スーパー+食品加工会社」「スーパー+物流会社」といった垂直的なM&Aが増えていく可能性がある。
ライフ自身も、今回のアルビス買収を巡る説明の中で、スーパーマーケットだけでなく、食品製造や調達機能を強化する川上領域をM&Aの対象として挙げる。これは見逃せない。

