医学生は大学病院での臨床実習で何を学んでいるのか。小児外科医の松永正訓さんは「ぼくが医学生のときにどういう教育を受けたかを伝えよう。現代的ではないかもしれないけれど、ぼくら医学生に考えることの重要性を徹底的に教えてくれた」という――。

※本稿は、松永正訓『大学病院の正体 手術、人事、教育、研究のすべて』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

胸の前で腕を組む医師
写真=iStock.com/ Pornpak Khunatorn
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時代が変われば大学も変わる

これまで述べてきた通り、千葉大病院は臨床・研究・教育のすべての面において洗練されてきたし、また、医局も民主化されてきた。これは他の大学病院でもぼくの知る限り同じだ。時代が変われば、大学も変わらなければならないということだ。

大学病院は、研究もできるいい臨床医を養成するために、教育に力を入れるというスタンスをとっているわけである。でもここで敢えて、昔の話をしよう。ぼくが医学生のときにどういう教育を受けたのか。古いからダメ……ではないということを伝えたい。

ぼくが医学生だったとき、小児外科の教授はこれまでたびたび出てきた高橋英世教授。先生の臨床実習はとにかく厳しいと評判だった。

月曜日の朝8時30分に、母子センター3階の小児外科病棟にぼくら学生は集合。かんたんなオリエンテーションがあって、9時から教授を除いた小児外科医全員による回診が始まる。もちろん看護師さんたちも一緒。

患児と付き添いの母親に声をかけたり、手術後の患者のガーゼを交換したり、和気藹々とけっこう楽しい雰囲気である。10時前に回診は終了し、ぼくらは高橋教授が来るのを待つように言われる。5分、10分と待つうちに心臓がドキドキしてくる。

教授がドスの利いた声で問いかける

病棟に高橋教授が現れると、それだけで空気がピーンと張り詰める。先生は糊の利いた詰襟型の白衣をビシッと身に着けている。この独特な白衣は二外科白衣と呼ばれ、ちょっと軍服のような精悍な感じがする。いよいよ、高橋教授の回診が始まる。

ぼくら学生5人は先生の後に付いて、301号室の1番目の患者のベッドのそばに行く。この部屋は小児がんの患者の部屋だ。6人の子どもは全員、髪の毛がないので部屋の中は独特な雰囲気がある。

まず研修医がかんたんに教授にプレゼンする。

「○○ちゃん、化学療法開始後7日目です。ワイセ(白血球の数)、900……プレート(血小板の数)、8万です」

教授は頷き、ぼくらに向かってドスの利いた声で問いかける。

「あんたらの所に、母親が、うちの子、お腹が大きく腫れているんですって来たら、どうする?」
「超音波検査をします」
「あんたは?」
「超音波検査をします」
「あんたは?」
「超音波検査をします」

みんな同じ答え。これが5回くり返される。なぜ答えがみんな同じく超音波検査なのか? それは学生の間で「超音波検査と答えないと怒られるぞ」と申し送られているからである。