物価高で増えた自炊派
3年前と現在を比較すると、自炊しない人は3.5%から1.6%へ半減した一方、毎日自炊する人は49.2%から55.0%へ増加していた。自炊派が増えた理由は、物価高の影響が最も大きく、他に仕事やライフスタイルの変化、そしてやはり健康問題も影響していた。
調理時間30分以内の時短派は3年前の調査より増加。食材や調理ツールを選ぶ際に意識するようになったことは、1位が節約、2位が健康・栄養、3位から5位が時短関連である。
今後活用が増えそう、と挙げられたのは、冷凍食品・冷凍ストック、ミールキット・下処理済み食材、カット野菜、自動調理家電などの時短ツール、それから健康志向による発酵食品、高タンパク系食材である。
調理を効率化しつつ、自炊で健康を守りたい意識が鮮明に出ていた。パンデミックを経験し、多忙ながらも工夫して自炊を続けることで、家族の健康を守ろうとする人が増加したのだ。おそらく彼女たちは、体感で台湾の調査結果に表れた自炊の力を知っていたと考えられる。
自炊生活を助けてくれる要因
マイナビのマーケティング・広報ラボが2024年7月に実施した調査は、23~28歳の未婚で正社員・公務員・団体職員の1人暮らしが対象。ふだんの食事は、「調理をして主菜と副菜を作る」人が57.5%と最多で、続いて「調理をして主菜のみ作る」が44.2%、テイクアウトと外食は3割程度しかいなかった。Z世代のシングルも、自炊派が多数だった。
以上の調査から、ライフスタイルや世代に関わりなく、40年以上続いた自炊減少傾向は底を打ち、コロナ明け頃から再び自炊派が増えつつあることが明らかになった。
冒頭に挙げた台湾の研究では、自炊が寿命を延ばす結果が出ている。台湾の都会では、安くてヘルシーな外食が手軽にできる一方、キッチンがない集合住宅の部屋が珍しくなく、3食外食せざるを得ない人も多い。台湾に比べれば、日本の外食は割高で住宅にはキッチンが一部の例外を除けば、たいていついている。それでも減っていた自炊率が上がってきた背景として、最も影響が大きい物価上昇と健康志向以外にも3つの理由がある。
1つ目は、ナディアの調査に表れていたように、最近は自炊を助けるさまざまなツールがそろっていることだ。ミールキットや、前回の記事でご紹介したように、コンロキャンセルができる自動調理家電もある。
2つ目は、自炊生活を助ける実用書の刊行が相次ぐこと。自炊料理家の山口祐加は、具体的な実践法を伝えるレシピ本や料理教室以外にも、多彩な角度から自炊の世界にアプローチしている。
例えば、料理技術はあるのに自分のためだけには作れない人に指導・分析を行った『自分のために料理を作る 自炊から始まる「ケア」の話』(星野概念と共著、晶文社)や、自炊を始めたミニマリストの佐々木典士と対談した『自炊の壁――料理の「めんどい」を乗り越える100の方法』(ダイヤモンド社)などを刊行。
レシピに囚われ過ぎて料理が負担になっている人に向けた、「レシピなし」の料理術をレクチャーする本も次々登場。今年だけでも『人生を救う名もなき料理』(佐々木俊尚、ダイヤモンド社)、『家に「あるもんで」今日も最高においしい! アルモンデごはん』(大塚佑子、高橋書店)といった本が出ている。