心身を若々しく保つにはどうしたらいいのか。糖尿病専門医の牧田善二さんは、「ヒトは血管から老いる。血管の老化は肌や骨、脳に至るすべての働きに影響し全身老化を招く。血管老化を加速させる“元凶”物質を抑えるカギは、毎日の“食べ方”にある」という——。

※本稿は、牧田善二『脳と体が老けない人の食べ方』(新星出版社)の一部を再編集したものです。

鏡を見ると老けている男
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「ヒトは血管から老いる」

日本人の平均寿命は男性で81.09年、女性は87.14年(厚生労働省・2024年)と世界でもトップを誇り、超高齢化社会を迎えています。

私が生まれた1951年当時の日本人男性の平均寿命は61歳でしたから、その頃に比べて20年も延びていることになります。

多くの人が長生きできるようになりましたが、そうなると次に目を向けるのが、病気にならず、元気に過ごしたい、心身をいつまでも若々しく保ち、老化に負けない人生を送りたいという願いではないでしょうか。

「ヒトは血管から老いる」という言葉がありますが、血管は私たちが生きていくために必要な栄養素や酸素を全身に運ぶ、重要な役割があります。その血管の老化が進み、働きが低下することは、全身の老化に直結します。

また、血管の老化は心臓病や脳卒中など、日本人の死因の上位を占める病気を引き起こします。それだけではありません。国民病とも呼ばれる糖尿病の合併症にも、毛細血管の詰まりが関係しています。

では、なぜ血管が老化するのか。

特に注目されているのが、血管を老化させる動脈硬化の元凶がAGEであることです。

AGEとは、「Advanced Glycation End Products」の頭文字を取ったもので、日本語では「終末糖化産物」と呼ばれます。

AGEが発見されたのは1912年のことで、当初は食品の風味を出すものとして捉えられていました。その後、AGEに似た反応が人体でも起こることが発見され、特に血液中の「ヘモグロビン」という酸素を運ぶ赤い色素と、ブドウ糖が結合した「ヘモグロビンA1c」という物質が存在することが明らかになったのです。

ヘモグロビンA1cはAGEそのものではありませんが、血糖が高い状態が続くと増加し、最終的にAGEの生成や蓄積のリスクも高まると考えられています。このため、ヘモグロビンA1cは糖尿病の血糖コントロール状態を評価する重要な指標として現在も活用されています。

1980年代になると、AGEは単に一時的な現象ではなく、体内のあちこちに蓄積し、老化や生活習慣病と深い関わりがあることが次第に明らかになってきました。

脳も体も“老化”の原因はAGE

AGEについての研究は、現在も世界中で行われていて、新たなことが次々とわかってきています。2000年代に入ってからは、AGEが老化を加速させるメカニズムがより明らかになりました。

AGEはシミやシワといった皮膚の老化、記憶力の低下をもたらす脳の老化にも関係しています。ほかにも、骨粗しょう症、変形性関節症、がんといった加齢とともに急増する病気にもAGEが関わっているのです。

脳も体も、老化はもちろんのこと、老化に伴うさまざまな病気にまでAGEは重大な影響を与えています。わかりやすく言うと、体内のAGEが増えるほど老化のスピードが速まり、病気のリスクが高まるということです。