歯周病は自覚症状がないまま進行し、最終的に歯を失うだけでなく全身に悪影響を及ぼす恐ろしい歯の病気だ。歯周病を防ぐには、日常的にどんなことに気を付ければいいのか。東京科学大学(旧東京医科歯科大学)の岩田隆紀教授に聞いた。

歯周病は「高齢者の病気」ではない

「歯ぐきのバリア機能が衰え始める30代から、歯周炎や歯肉炎にかかりやすくなります」

東京科学大学(旧東京医科歯科大学)で歯周病学を専門とする岩田隆紀教授は、こう話す。

厚生労働省のデータ(令和4年歯科疾患実態調査)によると、日本人のほぼ2人に1人は歯周ポケットが4mm以上あり、歯周病に該当する。増加傾向を示す年代は25歳後半からだ。

【図表1】歯周ポケットを有する者の割合、年齢階級別
図表=厚生労働省「令和4年 歯科疾患実態調査結果」より

歯周病は虫歯と並んで口腔内の2大疾患といわれている。虫歯と同じく原因は、歯垢(プラーク)、歯石、口内の細菌だ。

虫歯はミュータンス菌などの感染による歯の病気である一方、歯周病は歯周病菌など口内に100種類以上もいる細菌感染によって発症する、歯肉と歯を支える骨の病気。歯周病菌が歯と歯ぐきの間にある2、3ミリの溝に入り込んで増殖し、どんどん奥へと侵入、炎症が進むと骨を蝕んでいく。

出血は炎症が起きているサイン

歯周病は、虫歯より厄介だ。虫歯は冷たいものを食べたときにしみる、ズキンと痛むなど自覚症状が出るのでわかりやすいのだが、歯周病は別名「サイレントディジーズ」といわれ、虫歯のような自覚症状があまりない。そのため、つい放置してしまいやすい。

「ブラッシングした時に、出血が1回くらいならまだいいんですが、頻繁に出血する、朝起きてうがいすると、出血するというのは、もう炎症が起きているサインです。歯周病の初期段階の歯肉炎、さらに中期段階の歯周炎が疑われますね。血の味がする場合はかなり重症です」

初期症状は、歯肉が赤く腫脹(もしくは充血)する「歯肉炎」。歯ぐきが腫れても、痛みのような自覚症状は乏しい。歯ぐきが下がって歯が長く見え始めたら、中度の「歯周炎」に進行しているサインだ。

歯周病になった歯の模型
写真=iStock.com/piyaset
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この段階に達すると、歯槽骨が溶けた状態になり、歯がグラグラし始める。それを放置すると、もう抜歯も検討しなくてはならない「歯周炎(重度)」に進行している。