いい姿勢とはどのような状態なのか。日本整形外科学会認定スポーツ医の歌島大輔さんは「実は『いい姿勢』に医学的根拠はない。血液や酸素のめぐりを考えればこまめに『動く』ことこそ大切だ」という――。

※本稿は、歌島大輔『じゃないほうの肩こり』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

腰を手で押さえて座っている人
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです

肩を守る「ワンアクション」が人生を変える

これまでに私が出版した健康実用書では、肩関節の健康を維持・改善するトレーニング法やウォーキングのハウツーなどをご指南してきました。

しかし、『じゃないほうの肩こり』(サンマーク出版)はビジネスパーソンが手に取りやすい新書サイズで、健康実用書とはいえ、読み物の要素が大きく、構成スタイルがやや異なります。

そこで、シンプルかつプリミティブな発想で、「これだけ!」に大きな意味のあるケア法をお伝えし、忙しい毎日のなかでも無理なく続けていただけるようにしたいと考えました。結果、ご紹介するのは「ハイパワーポーズ」です。

いつでも気づいたときにワンアクションでポージングしていただくだけ、なのですが、これが実は肩関節はもとより、脳・心・身体の健康づくりにとても重要です。

日々のマインドやパフォーマンスをも左右すると、いくつもの医学論文で注目されているセルフケア法です。

後に詳しく述べますが、「ハイパワーポーズ」はしばらく、気持ちいいと感じていられる間だけ、その姿勢になっていただければOKというものです。

「ずっと姿勢を保たなければならない」「いつも姿勢を気にしていなければならない」などと思う必要はないので、気軽に取り組んでいただけるのではないでしょうか。

ちょっといいポーズでいる時間がだんだん長くなる。それが目標です。

そうなると見た目もさらに、はつらつ、堂々と、若々しく見えて一石二鳥ではないかと思います。

科学が証明した「開く姿勢」の4つの効能

いくつかの論文で解説されている「ハイパワーポーズ(身体を開くこと)の効能」をご紹介すると、以下のとおりです。

・意識して身体を開く姿勢をとることは、革新的なアイデアを生み出す創造性を高める(*1)
・何かを学ぶ折に身体を開く姿勢でいると、ポジティブな気分で勉強することができる(*2)
・ハイパワーポーズは自信やポジティブなセルフイメージ形成に役立つ(*3)
・ハイパワーポーズは、減少すると精神の安定に影響する男性ホルモン「テストステロン」を上昇させ、ストレスが増えたときに増加するため“ストレスホルモン”と呼ばれる「コルチゾール」を減少させる。その結果、パワフルなマインドでリスクに立ち向かう姿勢(リスク耐性)が高まる(*4)

などの研究結果が論文になり、発表されています。こうしたテーマは根源的な健康づくりにつながるものなので、私も大いに関心を寄せる分野です。

最新の現代医学を担う医師だからこそ、症状に対処する医療に限らず、病気やトラブルを寄せつけない「0次予防」の健康づくりに対して、目を向けていなければならないと考えているからです。