
なくても暮らせるがあると便利な食洗機
春、新生活が始まるという人も多いだろう。新居のキッチンに食器洗い機(食洗機)がある人は、どの程度いるだろうか? 内閣府が2024年3月に実施した「消費動向調査」によれば、食洗機の普及率は37.3%。2005年は21.6%だったから、19年で約1.73倍に増えた計算になる。とはいえ、洗濯機や冷蔵庫、電子レンジのように、たいていの家庭にある家事家電と言うにはほど遠い。
気になるのは、「主要耐久消費財」の普及率などを調べたこの報告書では、温水洗浄便座や衣類乾燥機、システムキッチン、カラーテレビは入っているのに、電子レンジは入っていないことだ。衣類乾燥機の普及率は55.0%、温水洗浄便座は82.0%。こうした、なくても暮らせるがあると便利な商品の普及を増やしたい、国の意図が入っていそうな気がする。

子育て期の女性に働いてほしい国は食洗機を普及したい
2021年には、経済産業省が「家事の強い味方、食器洗い機」というレポートを発表している。この調査では、食洗機の「販売数量は2016年以降、上昇傾向にあります」と書いている。その伸びはシステムキッチンの普及率とリンクし、ビルトインタイプが人気になっている。7割程度普及している欧米に比べると「日本の食器洗い機の普及率は低くなっています」とし、食洗機の導入が家事時間の短縮につながると訴える。子育て期の女性にもっと働いてほしい国はやはり、食洗機を導入してもらいたいようだ。より高価なモノが売れれば、経済にも好影響を与える。
メーカーだけでなく、国も普及率を上げたい食洗機。あれば、家事の1つが減る。「誰が皿洗いするのか」でケンカしなくて済むし、食事中に後片づけが気になって憂鬱になることもない。また、手洗いするお湯の温度は40度前後だが、食洗機なら60~70度で洗浄力も高まる。食洗機を導入した人はよく「ガラスのコップがピカピカになる」と喜ぶ。節水能力も高めだ。
それなのになぜ、普及が遅々として進まないのか。洗濯機のような巨大な食洗機が日本で登場したのが1960年で、家電各社が卓上型を発売したのは1968年、と半世紀以上も歴史がある。そして、2016年以降に食洗機の伸びが大きくなったのは、やはり子どもを産んでも仕事を続ける女性が増えたからだと考えられる。