きちんと仕事をしていれば、偏見もなくなるはず

面接ではまず「子どもができたらどうしますか」なんて聞かれましてね。「結婚もしてないのに子どもの話ですか?」と思わず聞き返しちゃいました。役員の人が「子どもができたりするといろいろねえ……」なんて言葉を濁しているので、「もちろん子どもができても仕事はします」とはっきり答えたことを覚えています。

私は女性パイロットとしては社内2人目の採用でした。面接のやり取りからもわかるとおり、当時の航空会社はやはり男社会で、「女性パイロット」というだけで面白くなさそうに振る舞う人、感情的になる人もいたものです。

でもそれはただの感情の問題であって、自分の人生には影響のないことなんだ、って割り切っていました。私がきちんと仕事をしていけば、そうした感情もそのうち収まるだろう、と。それに副操縦士として働いていると、上司(機長)というのはフライトの度に替わるんですよ。そりの合わない上司とずっと顔を合わせていなくて済むのは、この仕事の気が楽なところなんです(笑)。

そもそも飛行機の操縦が「男の仕事」であったのは、それが体力勝負の仕事だったからだと思います。昔の飛行機は操縦桿もすごく重かったので、なかなか女性が職業として就くという現実的なイメージが持てなかったのでしょう。

その時代の余韻がまだあるので、会社は未だに「男の雇用」「女の雇用」を分けて考えているところがあるし、男性の中に女性の進出を面白くないと思う人がいる一方、女性の側にも「女だから仕方ない」と諦めの気持ちを持っている人がいる。

でも、技術が進化した今、飛行機の操縦に力は必要なくなりました。パイロットは女性でも十分になれる職業になったわけです。

その意味で私が入社した頃から現在にかけて、この仕事は女性進出の過渡期にあるのだと私は思うんです。だからこの10年のあいだ、とくに心がけてきたのは、「諦めなければ、パイロットって女性でもなれるんだよ」というメッセージを、自分自身が実例となることで発することだったようにも感じます。