機長の責任の重さを思い知った3年間 

JALエクスプレス 藤 明里さん

飛行機の操縦席に座っていると、驚くほどたくさんの星が前面に見えることがあります。昔、小学校の授業で習った天の川が、本当に教科書通りに目の前に広がっていて、そこを流れ星が何度も流れていくんです。

夕日や晴れた日の富士山、少し天気が悪い日に空港へ近づいたとき、パッと浮き上がるように見える滑走路のライトの美しさ。それらは私にとって、この仕事をしていなければ知ることのできなかったものです。

でも、そんなふうに風景を楽しめるのは、フライトが安定していて心にゆとりがあるときだけです。

機長という仕事はそのフライトの最終責任を負うのですが、1つのフライトには数えきれないほど多くのスタッフがかかわっています。フライトに関するすべての決定権が機長にあるので、悪天候時の欠航の決断から機材の故障、燃料をセーブできる効率的な高度といった大きな方針から、フライト中の細々としたことまで「どうしますか」と聞かれる。

副操縦士やキャビンアテンダント、また、整備士、運航の支援をする航務といった地上スタッフなど多くの人たちと情報を共有し、そして連携を取りながら機長として一つひとつのフライトを作り上げていきます。私は機長になってから、副操縦士時代の自分が「最後は機長が決めてくれる」と、気持ちのどこかで安心していたことを思い知りました。その意味でこの役職について4年目を迎えたいま、良いフライトをしっかりと作り上げることができたときが、私にとって1番の醍醐味を感じる瞬間です。