退職後の生活は成り立つか?

さて、ここまで見てきた退職後の収入と支出をまとめてみよう。退職してから失業給付金の支給が終わるまでの期間は、給付制限期間約4カ月+支給期間約4カ月で約8カ月。この8カ月を次のステップへの準備期間として、生活は成り立つだろうか?

計算の前提として不可欠なのは、「毎月の生活費にいくら必要か」。美穂さんは、家賃と食費、こづかいなどを合わせて毎月20万円あれば生活できると考えている。そこで、この8カ月間の生活費と社会保険料、さらに住民税を合わせた合計額は次のようになる(住民税は年4回に分けて支払うが、ここでは総額で計算)。

■退職後8カ月間の支出
[生活費]月20万円×8カ月=160万円
[社会保険料]月約5万円×8カ月=約40万円
[住民税]約30万円
【計】約230万円

一方、収入が失業保険だけとすると、総額は約70万円。収入と支出を較べると、不足額は約160万円ということになる。もし手元の預貯金と退職金を合わせても足りないようなら、すぐに辞表を出すのは見合わせて貯金を増やすか、急いで転職先を探したほうがいい。

さて、美穂さんの場合は、これまでに貯めた預金が約500万円あるという。退職金も200万円ほどもらえそうなので、当面の生活はなんとかなりそうだ。十分に考慮した上のことなら、ここでいったん会社を辞めて、ゆっくり将来について考えることも可能。ただ、失業給付が終わるまでの間に、次の就職先を決めるか、フリーで収入を得る体勢を準備しておきたい。そうしないと、大事な預金もどんどん目減りしてしまうだろう。もしフリーでやっていくなら、収入が安定するまでにある程度の時間がかかる。その間にも、社会保険料が毎月確実に出て行くことを頭に入れておきたい。

転職や独立にはタイミングも重要。決心が固まったときはチャンスともいえる。35歳前後は、仕事の経験を積み、気力も体力も充実した人生屈指の働き盛り。美穂さんのようにスキルがあるなら、フリーを目指すのもいいだろう。グッドラック!

マネージャーナリスト 有山典子(ありやま・みちこ)
証券系シンクタンク勤務後、専業主婦を経て出版社に再就職。ビジネス書籍や経済誌の編集に携わる。マネー誌「マネープラス」「マネージャパン」編集長を経て独立、フリーでビジネス誌や単行本の編集・執筆を行っている。ファイナンシャルプランナーの資格も持つ。