「好奇心旺盛な人」は幸せになりやすいのか
では、最後に残る開放性はどうだったのでしょうか。
開放性とは、新しい経験を楽しみ、知的好奇心が強く、変化を前向きに受け入れる性格特性です。
一見すると、このような人は人生の転機にも柔軟に対応できそうです。そのため研究者たちも、「中年期の幸福度の落ち込みは小さいだろう」と予想していました。
しかし、結果は期待とは異なりました。
開放性と幸福度の変化との間には、一貫した関係が見られなかったのです。
オーストラリアでは開放性が高い人ほど中年期の幸福度が大きく下がりました。一方、ドイツでは逆に落ち込みが小さくなりました。イギリスでは、ほとんど違いは確認されませんでした。
つまり、「好奇心旺盛だから40代の危機を乗り越えやすい」と単純には言えなかったのです。
パイパー講師らは、この違いは個人の性格だけでは説明できず、それぞれの国の文化や社会制度、働き方などが複雑に影響している可能性があると考えています。
40代で幸せを失わないために必要なこと
これまでの分析結果が示すように、ミッドライフクライシス時の幸福度の低下は、各個人の性格特性によって異なります。
この研究から得られる最も重要な示唆は、「性格を変えましょう」ということではありません。むしろ重要なのは、自分の性格を理解し、それに合った対処法を意識することです。
例えば、責任感が強い人なら、周囲の期待に応えようとしすぎていないかを振り返ってみる。また、一人で抱え込みやすい人なら、家族や友人に助けを求めることをためらわない。
こうした心がけが、誰もが直面する「人生の谷」を少しでも穏やかに乗り越える助けになるかもしれません。
40代は、人生で最も幸福度が低くなりやすい時期です。しかし、それは人生の終わりではなく、その後の人生をより豊かにするための転機でもあります。
自分の性格を知り、自分に合った向き合い方を見つけることが、その谷を乗り越える第一歩になるのではないでしょうか。
〈参考文献〉
(*1) Blanchflower D. G. (2021). Is happiness U-shaped everywhere? Age and subjective well-being in 145 countries. Journal of population economics, 34(2), 575–624.
(*2) Piper, Alan T.; Zou, Min; Zhou, Ying (2026) : Personality, ageing, and the midlife low: Longitudinal evidence from Australia, Germany, and the UK, SOEPpapers on Multidisciplinary Panel Data Research, No. 1236, Deutsches Institut für Wirtschaftsforschung (DIW), German Socio-Economic Panel (SOEP), Berlin
(*3) Diener, E., & Seligman, M. E. P. (2002). Very happy people. Psychological Science, 13(1), 81–84.
1982年生まれ。慶応義塾大学商学部、同大学院商学研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。専門は労働経済学・家族の経済学。近年の主な研究成果として、(1)Relationship between marital status and body mass index in Japan. Rev Econ Household (2020). (2)Unhappy and Happy Obesity: A Comparative Study on the United States and China. J Happiness Stud 22, 1259–1285 (2021)、(3)Does marriage improve subjective health in Japan?. JER 71, 247–286 (2020)がある。