最も苦しかったのは「性格のいい人」だった
分析を行ったのは、イギリス・リーズ大学のアラン・パイパー講師らです(*2)。
パイパー講師らはオーストラリア、ドイツ、イギリスの大規模パネルデータを利用しました。これらのデータでは同じ人々を15年以上にわたって追跡しており、合計で30万人ほどを調査しています。
彼らはビッグファイブに基づいて人々を分類し、年齢とともに幸福度がどのように変化するのかを分析しました。
すると、意外な結果が見えてきました。
一般に「良い性格」とされる特性を持つ人ほど、中年期の幸福度の落ち込みが大きかったのです。具体的には、誠実性が高い人、協調性が高い人、神経症傾向が低い(情緒が安定している)人ほど、40代から50代にかけて幸福度が大きく低下していました。
つまり、まじめで、周囲への配慮ができて、感情が安定している人ほど、中年期の谷が深かったのです。
なぜ、このような逆説的な結果が生まれるのでしょうか。
なぜ「いい人」ほど40代で苦しくなるのか
パイパー講師らは、その理由として「社会的役割の集中」に注目しました。
誠実で協調性の高い人は、若い頃から周囲の期待に応えようとする傾向があります。職場では責任ある仕事を任されます。家庭では家族のために尽くします。地域活動や親の介護にも積極的に関わるかもしれません。こうした姿勢は若い頃には評価されます。
しかし40代になると事情が変わります。
仕事では管理職としての責任が増え、家庭では子育てや教育費の負担が重くなる。さらに親の介護が始まる人も少なくありません。さまざまな役割が一気に重なる時期なのです。
しかも、まじめな人ほど「断ること」が苦手です。周囲の期待に応え続けるうちに、自分自身の希望や楽しみを後回しにしてしまいます。
その結果、「私は誰のために生きているのだろう」「本当にやりたかったことは何だったのだろう」という疑問が生まれやすくなる。
パイパー講師らは、中年期を「外向きの人生から内向きの人生への転換期」と表現しています。そして、その転換が最も難しいのが、皮肉にも責任感の強い人たちというわけです。