この世の沙汰は「課金」次第
イギリスの経済紙『フィナンシャルタイムズ』に「『米国の夢』も課金次第」という興味深い記事が掲載されました(日本経済新聞2025年11月19日)。
フロリダにあるディズニーワールドは、以前は「誰もがVIP」とうたっていたのに、近頃は入場料を別にして1時間あたり最高900ドル(約14万円)のVIPツアーを用意しています。家族5人でディズニーワールドを訪れ、3時間のVIPツアーを楽しめば1万3500ドル、約200万円です。これにホテル代や交通費を加えれば、4泊5日の家族旅行の費用は会社員の年収くらいになるでしょう。
記事にはそれ以外にも、より高い年会費を払う「エグゼクティブ会員」だけが来店できる特別営業時間を設けた会員制量販店や、富裕層向けの豪華ラウンジを設けたところプレミアム航空券の収入がエコノミークラスの合計収入を上回るようになった航空会社が紹介されています。
航空会社の幹部によれば、インフレや失業率の上昇でも、年間所得が22万5000ドル(約3600万円)を超える層は消費をためらっていないが、それ以下の世帯は旅行にかける費用を大幅に切り詰めているといいます。株主からの圧力にさらされている企業経営者が、富裕層相手のビジネスに活路を見出そうとするのは当然なのです。
所得層の上位10%が消費の半分を占めるアメリカ
同じ『フィナンシャルタイムズ』の「膨らむ『富裕層優遇』市場 米『コンシェルジュ経済』映す」(日本経済新聞2026年3月20日)では、ニューヨークの有名病院に電話した知人が、1時間待たされたあと、「コンシェルジュサービス」の利用を勧められた話が紹介されています。
1万5000ドル(約240万円)のサービスに加入すれば、専門医に診てもらうための待ち時間が最小限に短縮されるほか、24時間いつでも診察を受けることができ、医師の診察時間も長くなるとのことです。
こうした「コンシェルジュ医療サービス」は世界で200億ドルの市場規模をもち、質が高く個人に最適化した医療サービスを求める富裕層をターゲットに、今後10年間で倍増すると予想されています。
医療以外にも、個人向けの旅行プランナー、さまざまな高級クラブの会員権、富裕層向けの資産運用、教育コンサルタントなど富裕層向けのコンシェルジュサービスの市場が急拡大しています。
その背景にあるのが、AIエージェントがコールセンターの仕事を代替するようになったことで、いまでは「人間」のスタッフと話すために高額のサブスクリプション(定額課金)サービスに加入しなければならないのです。
アメリカでは所得上位10%の支出が消費全体の半分を占めるまでになっていて、多くの業界や企業が着実に「ラグジュアリー市場」に移行しているのです。
