年収格差をもたらすのは、企業の規模や学歴だけではない。業界によってもかなりの格差が見られる。
厚生労働省の07年「賃金構造基本統計調査」によれば、平均年収が最も高いのは「電気・ガス」業界で、700万円を超えている。次いで「金融・保険」「情報通信」「教育」の3業種が600万円台と高年収だ(図参照)。
これに対して「卸売り・小売り」や「運輸」「サービス」といった業界は400万円台、最下位の「飲食・ホテル」業界は300万円台にとどまる。
一般的な給料格差の傾向は、以上のように「企業規模」「学歴」「業種」によってつかむことができるが、企業ごとの格差も無視できない。「ダヴィンチ・アドバイザーズ」の1792万円を筆頭に、金融関連や放送局、総合商社が上位に顔を出している(図参照)。
注目すべきなのは、ここに就職人気企業ランキングとは相当異なる顔ぶれが並んでいるということだ。人気企業ランキングは、世間知らずの大学生がいわば「好き嫌い」で選んだリストということができる。これに対して、平均年収ランキングは実際の待遇を比較した実質的な「よい企業」ランキングだ。
仮に年収だけを尺度に就職先を決めるとしたら、人気企業ランキングの上位とはほぼ無縁のキーエンスなどが、就職先として「お得な企業」ということになるだろう。
業界選びについても同じことがいえる。まず業界ごとの平均年収を調べてから、志望企業を選ぶというパターンが考えられる。
ただし、ここで問題なのは、業種別のランキングの場合は、時代ごとの花形業種が上位にくるということだ。逆にいうと、産業の盛衰に合わせてこのランキングは変動する。
石炭、砂糖、セメント、肥料――。これらは戦後間もない時期に日本の花形業種だった産業である。その後、紡績、石油化学、造船、電機とバトンを引き継ぎ、いまは金融や自動車、情報通信が花形といえるだろう。
だが、今後定年が65歳になれば、大学卒業から40年以上を同じ企業で過ごすことになる。定年を迎えるときに、同じ業種が果たして花形であり続けるだろうか。
また、好きでもない企業で働くことが当人にとって幸せなのか、という根源的な疑問を感じる人も多いだろう。