「人間の手にうつるとすべてが悪くなる」
親や教師などの大人たちは子どもの表面的な行動を見て、それを何とか正そうとして躍起になります。不登校の子を無理やり学校へ行かせようとしたり、自傷行為をする子を強く叱ったりします。ですが、それがしばしば事態を悪化させてしまいます。ヒモがもつれて団子の状態になっていたら、必要なのはヒモのもつれを粘り強くほどく作業です。ですが実際には、それを忘れて早急な解決を求めてしまい、ヒモをぐいっと強く引っ張ってしまいやすいです。すると団子は強固な塊となってしまい、もつれをほどくことはいよいよ困難になります。そういう子を診るたびに、フランスの啓蒙思想家、ジャン=ジャック・ルソーの言葉を思い出します。それは、彼が著書『エミール』の冒頭で述べた、「万物をつくる者の手をはなれるときすべてはよいものであるが、人間の手にうつるとすべてが悪くなる」という言葉です。
「昔から自分が嫌いだった」やせ症の女子高生
ある思春期やせ症(拒食症)の女子高校生は、体重が30kgを切った状態なのに、体重を増やすことができませんでした。やせることで仮りそめの自信を得ていたからです。自己肯定感について尋ねると、「昔から自分が嫌いだった」と言います。なので、それはいつからなのかを話し合いました。彼女は小さい頃から「お利口さん」で手のかからない子でした。親が叱ったことは数えるほどしかなく、親が叱る前に本人が行動を正すので、叱る必要がなかったそうです。ただ、「いつか怒られないか心配していなかった?」「親や教師が機嫌を損ねないか、気を遣っていなかった?」などを尋ねて話し合う中で、思い出したことがあると言って、次のような話をしてくれました。
小学生の頃のピアノの発表会での話です。自分の番となり、小さなミスはあったものの、何とか演奏を終えました。ミスを怒られると思ってビクビクしていたら、「よかったわよ」と母親は褒めてくれたので、その言葉にホッとしました。
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