fv_NISA制度改正_修正

金融庁は2026年度にNISAについて、対象年齢拡大など制度の改正を行う見込みだ。これらの改正は個人投資家の投資行動に、どのような影響をもたらすのだろうか。投資に詳しいファイナンシャルプランナーの田中香津奈さんに、改正のポイントとともに解説してもらった。

目玉は「対象年齢の拡大」、その影響は?

2025年12月19日に「令和8年度税制改正大綱」が発表された。税制改正大綱とは、各省庁から出された要望などを基に、与党の税制調査会が中心となって翌年度以降の税制改正の方針をまとめたもの。今回、税制改正大綱に盛り込まれたNISAの改正のポイントは、「①対象年齢の拡大」「②対象商品の拡充」の2つだ。田中さんは「どちらも良い改正だ」としたうえで、「ますます、投資をしている人としていない人の差が開くだろうという印象を受けた」と語る。

NISAに関する制度改正のポイント
つみたて投資枠 成長投資枠
こどもNISA
対象年齢 0~17歳 18歳以上 18歳以上
年間投資枠 60万円 120万円 240万円
非課税保有限度額 600万円 1800万円
⇒自動的に移行 1200万円(内数)
運用管理 一定の要件*の下、12歳以降は払い出しが可 制限なし 制限なし
投資対象商品 長期の積み立て・分散投資に適した一定の投資信託 上場株式・投資信託等
◎対象株式指数の追加
◎債券中心の投資信託の追加等
*資金の使途が子のためのものであり、子が払い出しに同意したことを示す書面とともに、親権者等(口座管理者)が申出書を金融機関に提出する。
※「令和8(2026)年度税制改正について」(金融庁、2025年12月)を基に、編集部作成。


インパクトが大きいと田中さんが考えているのが、NISAのつみたて投資枠の対象年齢を、18歳未満の未成年に拡大するという改正だ。

以前は未成年者を対象とした「ジュニアNISA」があったが、2023年末に廃止され、現在の新NISAは18歳以上しか口座が開設できない。改正されれば、子ども自身の名義でもNISAを活用して非課税で投資ができ、より早い段階から効率的に資産形成を進めることが可能になる。田中さんは「インフレが進む中、学費だけでなく将来の生活資金も長期的に備えていく必要があります。18歳未満でもNISAを活用できるようになれば、早期から非課税で資産形成を行える点は大きな利点です」と説く。

また、子どもの学資準備も時代とともに変化している。

「昔は子どもが生まれると、学資保険や積立預金で備えるのが一般でした。しかし、現在は学費が上昇し、従来の方法だけではインフレに対応しきれない場面も増えています。今回の改正により、子ども名義のNISA口座を活用して積み立て投資を行う家庭が増えていくでしょう」

子どもの名義のNISA口座で実践的な金銭教育を

子どもの名義のNISA口座を活用した長期投資は、教育資金の確保だけでなく、将来の資産形成にも大きな効果が期待できる。例えば子どもが生まれたときから児童手当を積み立て投資していったらどうなるか。想定利回りを6%として、毎月1万円の積み立て投資を行った場合をシミュレーションしてみると、70歳になったときの運用資産額は1億円を超える計算になる。もちろん、アルバイトや就職などで、子どもが自分で稼いだお金で投資できるようになったら、積み立て投資の出資は早めに子どもに引き継ぐといい。

田中さんはこう説明する。「『投資の神様』といわれるウォーレン・バフェットが、11歳で初めて株式を購入したことはよく知られています。子ども名義の口座で投資を行うこと自体は以前から可能でしたが、NISAの年齢制限が撤廃されれば、子どもが自身の名義で、より効率的に投資経験を積めるようになります。これはまさに「お金に働いてもらう」という実践的な金銭教育であり、「お金をどう使うか・どう増やすか」を早い段階から学べるようになるということです。投資に理解のある家庭ほど、学資や将来資金の準備とあわせて積み立て投資を取り入れる傾向があり、こうした経験の積み重ねが、子どもの金融判断力や将来の行動にも良い影響を与えると考えられます」

田中さんは、「将来的には、家庭ごとの資産形成の姿勢によって、結果に差が生じやすくなる可能性がある」とみている。

NISA対象の拡大で、債券中心の投資信託も選択肢に

2点目は、つみたて投資枠対象の公募株式投資信託について、指定指数に連動しない公募株式投資信託の要件を「主に株式に投資するもの」から「主に株式又は公社債に投資するもの」とする点だ。これにより、債券中心あるいはバランス型の投資信託の選択肢が充実し、資産形成の幅がさらに広がる。

田中さんはこう話す。「相談に来られる方の中には、『株式は値動きが大きくて不安なので、もう少し価格の動きが落ち着いた資産で運用したい』という方も一定数います。債券中心の投資信託を非課税のつみたて投資枠でも活用できるようになれば、こうしたニーズに応えやすくなるでしょう」

また、分散投資の観点からも今回の改正は意味がある。田中さんは、分散投資の一例としてGPIF(年金積立金管理運用独立法人)のポートフォリオを挙げる。

「GPIFは国内外の株式と債券に分散し、長期的に4%台の収益率を維持しています。もちろん、全員が同じ配分にする必要はありませんが、『大きくリスクを取りすぎない長期投資』という考え方の参考になります」

新NISAが始まってから約2年が経ち、今や18歳以上の成人人口の約4人に1人がNISA口座を保有するほどに普及している(2025年6月末時点で約2696万口座。日本証券業協会「NISA口座の開設・利用状況」より)。

NISAは、「家計の安定的な資産形成を支援するための制度」(「政府広報オンライン」より)とされているが、「家計の資産形成をより後押しするための方向性が明確になったと感じる」と田中さんは話す。 制度の背景を理解したうえで、自身や子どもの将来の資産形成に賢く生かしてほしい。

(取材協力=田中香津奈 執筆=大井明子)