投資家で2児の父! パックンの「お金哲学」と「マネー教育」徹底解説

投資歴30年以上を誇るお笑い芸人のパックンが、親子に向けて書き上げたお金の入門書『パックンの森のお金塾 こども投資』。マンガやイラストをふんだんに取り入れた本書は、楽しく読み進めるうちに自然と「投資とお金」について理解することができる一冊だ。2児の父であり、金融教育の講師として全国各地で講演活動も行っているパックン流の投資哲学と教育法を、本人自ら徹底解説する。

奨学金を約2年で完済! 向かった先は“投資”

僕が「お金とのつきあい方」について深く考えるようになったきっかけは、子ども時代の体験でした。僕が7歳のときに両親が離婚して母子家庭になりました。しかも不運なことに、その直後に母がリストラに遭ってしまったんです。それから僕は「お金のことを心配しなくて済むには、どうしたらいいんだろう?」「どうしたら、この状況を抜け出せるだろう?」と考え続けていました。

10歳から新聞配達をやって稼いだおかげで「お金を手に入れることが、どんなに大変なことなのか」を学びました。だから、お金を使うときには自然と「この10ドルを稼ぐには何軒の家を何日回らなきゃいけないのか?」「朝3時半に起きなきゃならない日が何日続くのか?」って考えるようになって、自然と節約するようになるんです。ハイスクールを卒業するまで8年間、新聞配達で稼いだお金は、主に生活費にあてていました。

大学に入ってからもアルバイトを続けたんだけど、それも生活費と学費にあてました。大学を卒業して、23歳で日本に来て、最初は福井で英会話学校の講師をやっていたんです。当時の月給は20万円ぐらいだったかな。その収入から奨学金の返済をしていました。当然、生活を切り詰めなくちゃならないけど、当時の僕にとっては、別に苦じゃなかった。節約が「楽しい冒険」「ゲーム」という感覚でしたね。

ようやく貯蓄や投資について考えることができるようになったのは、日本に来て2年半ほど経った頃かな? 奨学金の返済期間があと10年ぐらいあるはずだったんだけど、円高のおかげで、なんと約2年で完済したんですよ! それでお金を貯めて投資を始めたんです。

【入稿用】パックンインタ1

と言っても、投資についての勉強なんて、ほとんどしませんでした。会社にあった日経新聞をもらって、家に帰って読むぐらいかな。当時は、Windows95が発売されてインターネットが普及し、テクノロジー企業の株価が急激に上昇していた頃。後に「ドットコムバブル」と呼ばれる投資ブームの真っただ中でした。

パソコンで個別株の銘柄を調べて……と言っても、ファンダメンタルズ(企業の経済的な健康状態を示す指標やデータ)を調べるのではなく、チャートだけ見て「この銘柄来てるじゃん!」っていう調子で買っていたんです。これは今に至るまで続く僕の性格的な弱点の一つなんだけど、自信過剰なんですよね。初めは「オレ流の投資スタイルでいけば、絶対に儲かるはず」って思っていたんだけど。選ぶ株、選ぶ株、全部ダメだった(笑)。いまになって考えてみれば当然だよね。人生においては自信過剰が武器になる場面もあるけど、投資の世界では、自分は「ただの素人」なんだと思い知らされました。この苦い経験を経て、僕は「謙虚になろう」と心に誓い、投資についての勉強を始めました。その結果、「インデックスファンドや投資信託で長期投資する」という現在のスタイルに行きついたんです。

子ども用の証券口座を開設、クリスマスプレゼントは投資信託

僕は2児の父ですが、投資のことは子どもが小さい頃から少しずつ教育してきました。 長男が10歳、長女が8歳のときに、子ども用の証券口座を開設しました。毎年クリスマスには投資信託をプレゼントするんです。投資信託のパンフレットをいくつか開いて、「今年はどれにする?」って子どもと一緒にファンドを選ぶ……。それを毎年続けてきて、いま上の子は18歳、下の子は16歳になりました。

今、そのファンドはどうなってるかって? すごく増えてるんですよ。投資額の2倍ぐらいになってます。子どもは残高を見るたびに「おぉー!」って驚いてますよ。もちろん、本人のものだから、自由に引き出すこともできるんですけど、僕は子どもたちに、「お願いだからまだ使わないで!」と言っています。

なぜかと言えば、彼らが大学に進学したり、就職したり、引っ越したり、家庭を持ったり、家を買ったりするときに、「あのお金があるから、安心して冒険できる! 挑戦できる!」と感じてほしいから。でも、僕のホンネとしては、「老後までとっておいたら、どんなことになるのか見てみたい」という気持ちもあるんですけどね(笑)。

皆さんも、ぜひ、お子さんに子ども用の証券口座を作ってあげてください。証券口座は0歳から開くことができます。18歳になったら、本人名義のNISA口座が作れますので、その時に乗り換えればよい。一回売却しないといけなくて、投資利益に約20.315%の税金がかかるはずですが、大丈夫。それを払っておいて、なるべく早くNISA口座にうつしましょう。その方がより長い間、より大きな額に膨れ上がる資産に対する非課税の恩恵が大きいから。そんなことをしてもらえるお子さんってとてもラッキーですよね!

節約こそが、最も確実な「稼ぎ方」

手元にあるお金を殖やすためには、まずそれを減らさないこと。つまりは“節約”が大事です。英語のことわざに「A penny saved is a penny earned(1円の節約は1円の儲け)」というのがあるんだけど、僕はこのことわざを肝に銘じて、いかにお金を節約するかを考えています。

例えば、タクシーで3000円かかる場所へ移動するとします。電車を使えば10分余計に時間がかかるけど220円で行けるとしたら、あなたはどっちを選びますか? 僕なら迷わず電車を選びます。だって、10分で2780円稼げるんですから。時給に換算したら約1万6000円。そう考えるとワクワクしませんか? もちろん、僕も必要な時にはタクシーに乗るようになったし、そういう余裕が出てきたことを幸せに感じてもいます。でも、やっぱり節約を選んでいる自分が好きですね。なぜなら、その節約は、自分の人生だけじゃなくて、家族や、周りの人の人生を豊かにできる可能性も秘めているんですから。

新刊『パックンの森のお金塾 こども投資』は、子どものときからお金の仕組みを知ってほしいという思いで書きました。できるだけ若いうちからお金や社会について知ることで、自分の「理想の人生」に向かって助走をつけることができるんじゃないかと思うからです。親子で読んで、お金や社会について話すきっかけにしてもらえたらうれしいですね。EXITの兼近さんは、姪っ子にプレゼントして、感想を聞かせてもらったと言ってました。

もちろん、「初めて投資をしてみたい」という大人にもピッタリの内容です。証券口座を開設する方法から、福利の話、株の売り方まで、マンガやQ&Aも交えながら、ハウツー本としても読めるように工夫しています。僕がこだわったのは「オチ」の部分! お笑い芸人が書いた本ですから各ページに1個、2個……欲張って3個オチを盛り込んだところもあります。ぜひ、楽しく読んで投資を始めてほしいなと思います。

【入稿用】パックン書影
パックンの森のお金塾 こども投資
パトリック・ハーラン 著、伊藤ハムスター 絵/主婦の友社/本体価格1500円+税
お金は「いちばん大事なものではないといえども、人が社会の中で幸せに生きていくには欠かせないもの」と語るパックン。お金の基本的なことから子どもでも投資ができる方法まで、笑いを交えながらわかりやすく解説する一冊。

(取材協力=パックン、構成=梅澤 聡、撮影=キッチンミノル)