「お金持ちになれなくてもいい。ただ、お金に悩まない楽しい人生を送りたい」——。そんな願いを抱くプレジデントグロース編集部員が、金融機関の「中の人」・アセットマネジメントOne 未来をはぐくむ研究所 主席研究員の花村泰廣さんにガチ相談! 初心者にもわかりやすく、投資の質問にホンネで答えます。第2回のテーマは「NISAとiDeCoはどう違うのか?」。
花村泰廣(はなむら・やすひろ)
アセットマネジメントOne 未来をはぐくむ研究所 主席研究員。2006年から投資信託の商品開発、パンフレット制作、各種シミュレーション・ツールの開発などを担当し、約40年近く一貫して投資関連業務に携わる。好きな相場格言は「谷深ければ、山高し」。
プレジデントグロース編集S
30代前半の女性。新NISAブームに乗ってNISA口座を開設した。とりあえず人気銘柄を選んだが、将来の目標金額も、何のために投資をしているのかも漠然としており、今後の投資スタイルに悩んでいる。好きな金融用語はインカムゲイン。
確定拠出年金はなぜ必要なのか?
NISA(少額投資非課税制度)と同じくらいiDeCo(個人型確定拠出年金)という言葉も耳にします。漢字だけで見ると「投資」と「年金」で全然違うのに、どうして同列で扱われているのですか?
いいところに気がつきましたね。一般的に株式や投資信託に投資した場合、運用益等に税金がかかりますが、NISAはそれが非課税になるという優遇制度です。
一方、iDeCoはその制度の趣旨を考えると理解しやすいかと思います。国民年金や厚生年金といった公的年金は、現役世代がリタイアした世代を支えましょう、という考え方で成り立っています。
しかし、少子高齢化が続き、公的年金だけでは老後の生活を全てまかなうことが難しくなってしまいました。
そこで2001年にスタートしたのが確定拠出年金です。これは加入者が自分で毎月定めた金額を積み立て、積み立てた資金を自分で運用する、という制度です。つまり、iDeCoは国民年金や厚生年金に上乗せして自分でつくる年金制度ということです。
なるほど! 「公的年金では足りない資金を自分でつくる」という意味で確定拠出年金という名称になっているんですね。「年金」=「現役世代が高齢者を支える制度」というイメージが強かったので、確定拠出年金は積み立てた分だけ自分に戻ってくる、という考え方が今ようやくわかりました。
ちなみにですが、公的年金は保険と同じだと考えておいたほうがよいでしょう。保険料は、払った分だけ自分に戻ってくるとは限りません。賃金や物価水準など社会の状況によって受給額も変動します。
さらに言うと、確定拠出年金は国民年金と同じように障害給付金や死亡一時金という形で受け取ることもできます。基本的には公的年金と確定拠出年金は老後の生活を支える制度として一体で考えたほうがよいでしょう。
NISAと併用する必要はある?
確定拠出年金にはどんな種類があるんですか?
確定拠出年金(DC)は、企業型DCと個人型DC(iDeCo:イデコ)の2つの制度があります。
企業型DCは会社が準備してくれる退職制度の一つで、退職金の代わりに会社が資金を拠出してくれますので、それを自分で運用して増やしていくものです。
iDeCoは、自ら金融機関で専用の口座をつくって入金し、運用をしていくことになります。なので、国民年金に加入していれば、専業主婦やフリーランスといった、企業に在籍していない人でも加入できます。
仮にNISAで積み立てたとして、さらに確定拠出年金も必要なのかな?と思ってしまいますが……。
いくつか制度の違いはありますが、運用益等が非課税というところでは同じなので、どちらも必要なのか迷われているのですね。
そうなんです!
NISAは、税金や社会保険料を納めた後のお金で投資をするものです。そして、約20%の運用益等にかかる税金だけが非課税になります。
一方で、確定拠出年金は、税金や社会保険料を納める前のお金を運用に回すことができ、その掛金は所得から控除となります。しかも運用益等も非課税です。
さらに企業型DCであれば手続きなどは会社がやってくれますし、iDeCoについても会社員であれば年末調整で所得控除をしてくれます。もし年末調整していない人がいたら、確定申告をすることで5年前までさかのぼって税金の還付を受けることができます。
所得控除によって節税効果があるのはかなり魅力的です。しかも自分自身で投資するわけだから、将来いくら受給できるかという不安もなく払えますね。なんだか加入したほうがいいかも、という気持ちになってきました。
2025年の法改正で、iDeCoに投資できる金額が増額される見込みですから、特に年収の高い40代、50代の人は利用を検討してもよいと思います。
iDeCoは受給開始が60歳以降ですが、受け取る際の注意点はありますか?
確定拠出年金は60歳から74歳までの間に一時金か、年金か、一時金と年金を組み合わせて受け取るのか決めて請求できるのですが、一時金で受け取る場合は「退職所得控除」、年金で受け取る場合は「公的年金等控除」が受けられますので、退職金の少ない人は一時金で、公的年金の少ない人は年金で受け取るとメリットが得られます。
個人の状況によって決められるのはありがたいですね。私が受け取るのは約30年後なので、またそのときに相談させてください!
30年後か……。
(構成=吉田彩乃、写真=市来朋久、図版作成=大橋昭一)