「徹底的ほめる」ことの大切さを教えてくれる朝礼がある。

この日参加していたのは20人ほど。全員が紺色の手帳「こづち」を持参して臨む。

この日参加していたのは20人ほど。全員が紺色の手帳「こづち」を持参して臨む。

つきじちとせは羽田空港、東京駅といった人が集まる場所で土産用の和風生菓子を売るメーカーだ。年商は8億円で、従業員は70名。東京・大森にある同社の本社兼工場では1年365日、欠かさず朝礼が行われている。空港や駅の売店は年中無休の営業なので、正月も工場は休めないのだ。

朝礼の眼目は従業員が同僚の長所を「ほめる」ことにある。スタートは午前9時。全員で経営理念や社是を唱和した後、司会役の従業員が手帳を取り出し、なかの訓話を読み上げる。手帳は「こづち」と呼ばれるもので、独自の編集による訓話集だ。

訓話は100近く載っている。

「かゆいところに手が届く心配りをする」「お客さまに最高の思い出を作る」

以上のようなもので、どれも仕事に関わる身近なエピソードばかりだ。

司会役は訓話を読み上げた後、内容を自分の体験に置き換えて語り、そして今後はさらに努力するとみんなの前で決意を表明する。

その後、工場長が司会役の話について、あるいは司会役の日ごろの働きについて「ほめる」ことが始まる。それも、「いいですね」といった通り一遍のほめ方ではなく、具体的な点を挙げて徹底的にほめるのだ。

つきじちとせ常務の城内正行氏は「ほめる」朝礼の意義を、こう語る。

「朝一番からほめることで、社員はやる気になります。つまり、ほめることは相手の存在を認めることなんです。人間は認められたら頑張ろうという気持ちになる。逆にけなされたら、マイナスの気分になる。マイナスの気持ちが蔓延したら、どんな経営手法を導入しても企業は強い体質にはなれません」

つきじちとせの朝礼は、ほめる朝礼だ。そして、それを365日続けていることが結果を出しているのだろう。

(尾関裕士=撮影)