慢性頭痛に悩む人は多く、「15歳以上の日本人の3人に1人は慢性頭痛持ち」といわれ、その数3000万人にのぼる。ところが、その中で治療を受けているのは、わずか30%という。その30%の人も、脳腫瘍やくも膜下出血がないとわかると、医師が鎮痛薬を出して終了にしてしまう。頭痛に対応できる専門医の少ないことも頭痛患者を悩ませているといえよう。

さて、この慢性頭痛には「片頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」「混合型頭痛」とあるが、今回は患者数800万人といわれる片頭痛を紹介しよう。

片頭痛の症状は、頭の左右どちらかが痛むケースが多いが、後頭部が痛む人もいる。より特徴的なのは、こめかみから目の奥にかけて痛みが起こるケースが多いことである。日常的に動いていると痛みが強くなり、入浴したり酒を飲んでも痛みは強くなる。そして、「吐き気」「おう吐」「光過敏」「音過敏」が起こる。

このような症状が起きるのはストレスから解放されたときである。ストレスから解放されると、血管は自然と拡張する。このとき、体の血管だけでなく、こめかみのところを通っている浅側頭動脈や他の脳血管も拡張し、拡張することで周囲を走っている三叉神経を刺激して片頭痛が起きる。このほか、女性には月経時片頭痛も多い。

強い痛みは月に1、2度。そのときは数時間痛みが続く。ただ、片頭痛と長く付き合っていると片頭痛の起きる予兆がわかる人が増えてくる。特徴的な予兆は、「いらいらする」「あくびの回数が増える」「何となく体調が悪い」「閃輝暗点(せんきあんてん)がある」など――。

閃輝暗点というのは、まず水面に光が乱反射してキラキラ輝く光景が視野の中に見える。これが閃輝。その後、一転して暗点に――。20~30分後にサイン通りに片頭痛が襲う。

これらの予兆をキャッチしたら素早く医師から処方された薬を服用し、暗く静かな場所に横になっているのが1番である。予兆のない人は痛み始めたらすぐに頭痛薬を服用しよう。

2000年4月を境に、頭痛治療は1大変化を遂げた。特効薬の皮下注射薬スマトリプタンが発売されたからだ。以後、経口薬、点鼻薬、口腔内速溶錠(水なしですぐに口の中で溶ける)が相次いで発売されている。

トリプタンにはスマトリプタンを含め数種類がある。いずれも脳の神経伝達物質セロトニンの2つの受容体に選択的に作用し、拡張していた頭部の血管を収縮させて炎症を抑える。加えて、吐き気やおう吐も鎮めてくれる。

1つのトリプタンで効果のないときは他のトリプタンに替えたりして、上手に薬を使うことで片頭痛の人の90%に効果が出ている。

 

食生活のワンポイント

片頭痛治療に食事指導を取り入れている医療施設もある。欧米における研究で、ビタミンB2を大量に摂取すると、片頭痛が改善されることがわかってきた。

ビタミンB2は糖質、脂質、タンパク質などの代謝に関わる重要なビタミンで、発育ビタミンともいわれている。

牛・豚レバー、牛乳、卵、チーズ、緑黄色野菜(ブロッコリー、ほうれんそう等)、納豆、いわし、アーモンドなどに多く含まれる。ただし、治療として取り入れる場合には通常の200倍程度の摂取が必要になるので、その場合はビタミン剤を利用することになる。

また、片頭痛抑制にミネラルのひとつであるマグネシウムもよいとされる。マグネシウムは心臓を丈夫にしたり、精神のイライラを和らげてくれる。

マグネシウムはひじき、昆布、カシューナッツ、ピーナツ、納豆、いかなどに多く含まれている。1日の必要量は310ミリグラムなので、多少多く400ミリグラム以上摂取するようにするとよいといわれている。