パナソニックの朝会(朝礼)は、前身である松下電器が創業した翌年の昭和8年から連綿と続いている。国内のみならず、世界100カ国ほどあるそれぞれのオフィスで、約33万人の社員が参加している。

職場によって開始時間等は異なるが、内容はどこもほぼ同じだ。以下は芝公園にある東京本社広報グループの朝会の進行内容である。

午前8時50分 英語版グループソング「Shall be done」が流れる。

午前8時55分 起立して、日本語版グループソング「この夢が未来」を斉唱。歌っていない人もいる。

午前9時 「所感」の発表。所感とはスピーチのこと。社員が持ち回りで自由なテーマで話をする。その日は英語での所感が奨励される「多様性月間」だったため、担当の香港系カナダ人の社員、キャシー・リューさんは英語でスピーチをした。ほかに「環境月間」などがあり、その月は環境に関する所感を発表する。

午前9時10分 同社が掲げる「私たちの遵奉すべき精神」を唱和。この日は、これも英語で唱和していた。

パナソニックでは経営理念を唱和しスピーチをする日本式の朝礼を世界中の拠点でも実施している。

パナソニックでは経営理念を唱和しスピーチをする日本式の朝礼を世界中の拠点でも実施している。

広報の武藤真菜さんは言う、「2008年に社名をパナソニックにしてからグループソングが新しくなるなどしましたが、朝会の内容は基本的に変わらず、松下精神を受け継いでいます。朝会をすると、仕事に取りかかる前に気分が新たになりますね」。

グループソングに爽やかで上質な音楽を採用しているのも同社の特徴だ。日本語版グループソングの作詞は森雪之丞、作曲は久石譲。英語版はサラ・ブライトマンが歌っており、“エコでグリーン”なイメージの曲だ。いずれも社員に好評だという。サラ・ブライトマンの前はドリームズ・カム・トゥルーだったというから、同社は社歌の選定に対して柔軟なセンスを持っているようだ。

(澁谷高晴=撮影)