小曽根 真

1961年、神戸市生まれ。ボストンのバークリー音楽大学(ジャズ作・編曲科部門)を首席で卒業し、ニューヨークのカーネギーホールでソロデビュー。日本を代表するジャズピアニストとして活躍中。最新作は自身が率いるビッグバンド「No Name Horses」による、ジャズのスタンダードナンバーを収録した初のライブアルバム『Back at the Club“in Tribute”』。東日本大震災チャリティアルバム『Live & Let Live-Love For Japan』も同時発売。収益金は公益社団法人企業メセナ協議会GB Fundに全額寄付される。


 

沖縄料理店「うない」には10年以上、通っているのかな。僕は4年前までニューヨークに住んでいたのですが、帰国時には、成田空港からこの店に直行することもあったほど、お気に入り。

沖縄料理は苦手なメニューもあるのに、この店の料理ならどれも美味しく食べられるんですよ。僕みたいな客は多いそうです。たとえば「ソーメンちゃんぷるー」も、通常はサラダ油と塩胡椒でソーメンを炒めますが、ここでは沖縄産唐辛子を漬け込んだオリーブオイルを使ってアクセントにしてある。全体的にやさしい味で強い癖はないのですが、随所に繊細な工夫が施されているんです。

昔は肉料理ばかり食べていた僕も、最近は健康と体力づくりのために控え気味。でも、僕と一緒に食べにきたパーソナルトレーナーさんが「ここの“らふてぃ”なら大丈夫。むしろ食べたほうがいい」と太鼓判を押してくれました。余計な脂を落としたビタミンBたっぷりのヘルシーな豚肉料理だから安心して食べられます。

僕は神戸出身なのですが、故郷にも大好きな店があります。「豊國」という焼き鳥屋さんで、祖父の代から通っているから、店の人とはもう親戚気分です。僕の指定席はカウンター奥の「前4」とお店の人が呼ぶ席。

「前4、肝サシ二人前!」なーんて常連っぽく頼んだりして、すっかり寛いでいます。この店も仕事が丁寧。焼き鳥はもちろん釜飯もうまいですよ。

僕は神戸出身と言いましたが、神戸の震災時は実家も親戚の家も全壊しました。だから、今回の震災で被害に遭われた方の気持ちは理解できるし、復興まで長期戦になると思っています。でも先ほどの「豊國」も震災を乗り越えて店を続けたんです。

そこで、細く長く復興の一助になれたら……という思いで、チック・コリアさんやジェイク・シマブクロさんなど、世界中の音楽仲間と一緒にチャリティアルバム『Live & Let Live-Love For Japan』をつくりました。一人ひとりに呼びかけのメールを書いていると、二人目を書き終わらないうちに、一人目から即「マコト、もちろん一緒にやろう」という返事が届きました。その後も、続々と返事が到着。日本に起きた災難を心から心配してくれていることが伝わり、僕自身も励まされました。ジャケットのアートワークは友人の佐藤可士和さんです。

僕はジャズマン。音楽の力を信じて、少しでもお役に立ちたいと思っています。