数十万人から百万人が経済的に自立できていないという現実

もちろん、就職氷河期世代であっても、男性の大半は正規の職に就いている。また、女性に関しては、上の世代よりはキャリアと家庭の両立がしやすくなっている面もあるだろう。しかし、経済的に自立できていないと思われる層が世代人口全体の数%を占めているのも事実だ。就職氷河期世代は約2000万人、そのうちの数%であるから、数としては数十万人、あるいは百万人を超えているかもしれない。

「8050問題」という言葉がある。80代の親と50代のひきこもり状態の子供からなる世帯が、しばしば経済的に困窮したり社会的に孤立したりすることを指す。ひきこもり状態の子供の生活の面倒を見ていた同居の親が高齢となって、介護が必要となったタイミングで支援につながるケースも多いが、最悪の場合は、要介護となった親も社会的に孤立した子供も公的な支援につながれないまま、孤立死する事件も起きている。

「8050問題」そのものは、就職氷河期世代が50代になるより前から指摘されてきた問題だし、狭義にはあくまでも、高齢に至るまで公的支援を受けられずにいるひきこもりの子供とその親の問題だ。しかし、ひきこもり状態のようにすぐに福祉の介入が必要という段階には至っていなくても、未婚の低所得者で、実家住まいで住居と食事を親から提供されて何とか生活が回っている、といった状態の人は、就職氷河期世代以降の世代で確実に増えている。

出所=『就職氷河期世代』(中公新書)、総務省統計局『労働力調査』より筆者作成

未婚の低所得者が50代に、その親は80代になりつつある

人口の多い団塊ジュニア世代が50代を迎え、狭義の「8050問題」への社会的関心が高まるとともに、親に経済的に依存している未婚の低所得者の問題が、いわば広義の8050問題として取り上げられることも増えてきている。

一方で、狭義の「8050問題」をはじめとする社会的孤立の問題と、親に経済的に依存している未婚の低所得者の経済的自立の問題は、重なる部分も大きいものの、対策としては区別して考える必要があると思う。

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