財部 理由の1つは、公立中学の内申点に対する批判です。特に東京では他県以上に叩かれていると感じます。

しかし私が生徒の内申点を冷静に見てきたなかで「これはおかしい」と感じた経験はほとんどありません。あったとしても「5が付くと思っていた子が4になった」程度で、「5が3になった」というのは見たことがないです。

「内申点」が批判される理由

――では、なぜ内申点がこんなに批判されているのでしょうか。

財部 SNS社会が要因の1つだと思っています。「こんな酷い内申点をつけられた」という投稿が1つでもあれば、それが一気に拡散します。それがたとえ1000人に1人のケースだったとしても、もっと多くの人が酷い目に合っている印象になってしまいます。

また、首都圏は中高一貫校の選択肢が多く、メディアの力が強いので「公立中学は酷いから教育熱心な親は中学受験させるべきだ」という声が大きくなっているように思います。親にとっては、安心を買う保険のようなものでしょう。

確かに合格のボーダーライン上の子にとっては、内申点の1つの違いは死活問題かもしれません。しかしレベルが1つ下の高校へ行くことになっても、公立高校はカリキュラムも教科書も基本的に同じなので大きく変わることはないと思います。

――あまり内申点を恐れなくても大丈夫ですか?

財部 「高校が多少変わっても、人生そんなに変わらないよ」と言ってあげたいです。むしろ少し余裕を持った偏差値の高校へ入って、指定校推薦を狙った方が大学受験の戦略として手堅いかもしれません。

中高一貫校から一般入試でMARCHに落ちる子がいる一方で、偏差値が低い公立高校に山ほど推薦枠があったりと、実際の受験は不公平だらけです。それを考えれば、内申点なんて些細な問題ではないでしょうか。少なくとも、内申点制度を避けるために無理に中学受験をさせる必要はないと思います。

――「公立中学が荒れているから避けたい」という声がありますが、実態はどうなのですか?