土地持ち資産家が信用金庫を利用する理由
一方で土地持ちの資産家には、信用金庫、郵便貯金、JA(農協)などを利用している人も多くいます。これは“お付き合い”の意味合いが大きいでしょう。
不動産賃貸業や農業などを営んでいる場合には、地元との関係が重要になります。また、地元の金融機関は集金に来てくれるなどのメリットもあります。あるいは預金者を集めた旅行なども開催しているので、人間関係をつくりやすいのです。
信託銀行は「お金持ちのための銀行」というイメージがあります。
信託銀行では一般の銀行にはない「信託商品」を扱っています。たとえば、「遺言信託」は遺言の作成から保管、執行までをサポートするサービスです。信託協会のデータによると、信託銀行の遺言保管件数は2022年9月末時点で約17万7000件です。2012年には約8万1000件でしたから、10年間で2倍以上に増えた計算です。
資産数十億円規模のお金持ちが利用する銀行とは
資産が数億円規模以上のお金持ちは信託銀行を思ったほど使っていません。一つの理由は、顧問税理士がついているケースが多いからです。信託銀行を利用しなくても、顧問税理士に相談すれば、遺言や家族信託を使った相続対策などを提案するので、信託商品とはライバル関係なのです。
金融資産が数億円規模になると、海外資産を持っている人も多く、UBSなどの外国銀行を使っている人も目立ちます。UBSはスイスに本部を置く銀行グループで、最近では経営不安に陥ったクレディ・スイス・グループを買収したことで話題になりました。資産規模の大きいお金持ちには、こうした海外の銀行から個別の営業があり、融資金利や為替手数料など非常に有利な条件を提示されることがあるようです。
たとえば、多くのお金持ちがドル資産を保有していますが、通常の銀行でドル預金をしようと考えると、円をドルに交換するときに1ドルごとに1円、ドルを円に戻すときにも1ドルごとに1円で往復2円の為替手数料がかかります。お金持ちに対しては、相対で条件が提示され数銭の為替手数料で済むこともあります。