われわれは歴史的な転換点に立っている
詳しく言うと、2015年に日本の値は0.981となり、すでに1を下回った。しかし、これは円安の影響であり、一時的なものに終わった。また世界銀行のデータではなく、OECDの統計によると、2020年に日本の値はすでにOECDの平均を下回っている。
ただ、この年は新型コロナの影響で長期的な傾向が乱されているので、あまり参考にならない。
また、ここではOECD平均を先進国の水準と定義したが、「先進国」についてはさまざまな定義がある。例えばIMFでは、一人あたりGDPのほか、輸出品目の多様性やグローバル金融システムへの統合度合いを考慮して40の国・地域を先進国としており、日本はその第24位だ。
この定義でいうと、日本の地位が下がっても、まだしばらくは先進国であり続けるだろう。だから、「先進国」という表現を用いることには注意が必要だ。
ここで強調したいのは、日本がいま歴史的な転換点にあることだ。
1995年を境に減少の一途に…
図表2に示されている日本のグラフは、1995年頃を軸にして、ほぼ左右対称形になっている。
現在とちょうど対称の位置にあったのが、60年代末から70年代初めにかけての時期だ。
日本は1964年にOECDに加盟をするのだが、この頃、日本は高度成長の結果、先進国の仲間入りをはたした直後だった。1963年度の「経済白書」のタイトルは「先進国への道」だった。
図表2で見ても、日本が、急成長の結果OECD平均のラインに近づき、追い抜いていく様がよく分かる。
他方で、第二次世界大戦後、圧倒的な経済力を誇っていたアメリカの相対的な地位は低下していた。これは、図表2でアメリカの線が傾向的に低下していることで示されている。
1985年頃に一時的に上昇しているが、これは同年のプラザ合意でドル高が修正されたことによる一時的回復だ。
それでもまだ、1973年のアメリカの一人あたりGDPは、日本の約1.7倍だった。アメリカに行けば、その豊かさに圧倒された。
なお、同年の韓国の一人あたりGDPはOECD平均の10.4%であり、日本の101.3%とは比べものにならなかった。
いまは1970年代初めと同じ経済状態
いまの日本の一人あたりGDPは、OECD平均との対比でも、またアメリカとの対比でも、1960年代末から70年代初め頃と同じ状態にある。
図表2で見るように、いま日本の一人あたりGDPはOECD平均とほぼ同じだ。これは、70年頃と同じ状況だ。
アメリカの一人あたりGDPは日本の約1.6倍だ。この数字も、70年代の初めとほぼ同じだ。
1995年を軸とする左右対称の姿が続いていくとすると、図表2の点線で示すように、日本の値は、OECDの平均値を下回っていくことになり、2030年頃には、OECD平均の半分程度の水準になってしまうだろう。
つまり、日本は「先進国」とは言えなくなってしまう。